虫籠窓

外まわりの造作

町家の二階に開く、太い格子を土で塗り込めた固定窓です。開け閉めできないかわりに、明かりと風と火除けを一つの窓で引き受けます。

どんな形か

縦に並べた太い格子を、そのまま土と漆喰で塗り込めた窓です。開口は横に長く、人が立てないほど天井の低い二階の壁に並びます。格子は塗り厚のぶん角が丸くなり、虫籠を伏せたような影が壁に落ちます。建具は入らず、内側から開くことはありません。名は籠に似た姿から来ており、「むしこ」とだけ呼ぶ土地もあります。奈良県橿原市今井町や京都府の町家では、白い漆喰と黒い土の両方の仕上げが見られます。

なぜその形になったか

天井の低い厨子二階と一体で生まれた窓です。二階を物置や蚕室として使う低い階では、座って手元が見えるだけの明かりと風で足り、開かない窓のまま採光と換気をまかなえました。土で塗り込めたのは隣家からの火の粉を受けても燃え移らせないためで、防火の壁を切らずに開口を取る解き方でもあります。二階に居室を置かない町家の造りが、そのまま窓の形に出ています。

見分けの決め手

格子が土で塗られ、動かないことが決め手です。木の格子がむき出しなら別の窓で、塗り厚で角の丸くなった縦棒が並べば虫籠窓に寄ります。位置も効き、一階の屋根と二階の軒の間の低い壁に横並びで開きます。改修で木部を露わにした例もあるため、縦棒の断面が四角いか丸いか、下端に水切りの瓦が付くかを合わせて確かめます。

取り違えやすい相手

開く塗り込め格子窓と、出格子が相手です。内側に溝があり、格子ごと動くものは虫籠窓と呼び分けられます。出格子は壁から張り出し、一階の道沿いに付くので高さが違います。虫籠窓を文化遺産オンラインで引くと176件が当たり、近畿に偏りながら中国四国にも及びます。呼び名は町ごとに揺れており、同じ形を塗籠の窓と記す説明もあります。

どのあたりで見られるか

二階を低く抑えた町家の通りで見られます。奈良県橿原市今井町、京都府京都市の町家、岡山県倉敷市の倉敷川畔では、二階の壁に横長の窓が連なる町並みが残ります。広島県竹原市の重要伝統的建造物群保存地区でも同じ形に出会えます。向かいの軒下から見上げるより、通りを渡って斜めから見ると塗り込めた厚みが分かります。住まいとして使われている建物が多いので、敷地に入らず通りから見ます。