原水の成分

組成と処方

処方は、水に何が入っているかから始まります。水道水や井戸水にもともと含まれる成分と、pH を戻す力は、足した肥料と同じだけ効きます。

何を担う成分・数字か

肥料を溶かす前から、水そのものがカルシウム・マグネシウム・ナトリウム・重炭酸を持っています。なかでも重炭酸はpHを押し上げ、下げようとする酸を飲み込む力を持ち、微量要素を沈ませる原因にもなります。井戸水は場所ごとに中身が違い、石灰岩質の地下水ではとくに高いことがあると日本施設園芸協会の資料は書いています。ここを読まずに組んだ処方は、狙った濃さになりません。

目安の範囲

日本の水道水は水質基準に関する省令の範囲に入り、硬度300 mg/L 以下、ナトリウム200 mg/L 以下、塩化物イオン200 mg/L 以下、pH は5.8以上8.6以下と決まっています。上限であって実際の値ではないので、事業者の水質検査結果を見ます。日本施設園芸協会の共通テキストが載せるトマトの例では、原水のEC 0.2 dS/m、カルシウム1.0 me/L、マグネシウム0.7 me/Lでした。

動かすと何が変わるか

重炭酸が濃いとpHを下げるのに多くの酸が要り、その酸から入る硝酸やリン酸が処方を書き換えます。逆に雨水のように薄いとpHが振れやすくなるので、同じ資料は30〜50 mg/L あたりだと落ち着くとしています。硫黄と鉄が多い水では、それを使う細菌のぬめりが出口を細らせる、とフロリダ大学の HS796 は書いています(→ノズルから霧が出なくなる)。下げ方と上げ方はpHの上げ下げにまとめました。

測りかたと直しかた

EC計とpH計に重炭酸を足した3つを、始める前に測ります。重炭酸は原水100 mL に薄い硫酸を少しずつ加え、pH 4.8 になるまでの量(mL)に6.1を掛けて出します(日本施設園芸協会)。同じ資料は、pH の代わりに EC の跳ね上がる点を読む数えかたも載せています。神奈川県の施肥基準(令和4年)は、値によっては養液栽培を避けたほうがよいとまで書いています。

解説動画: What impacts the pH of your growing medium: water pH or water alkalinity?/PRO-MIX Greenhouse Growing

pHとアルカリ度: 動画はまず、水のアルカリ度と水のpHは別のものだと断ります。pHは水の酸性の度合いで、酸性なら低く、高いほどアルカリ性の水になる。いっぽうアルカリ度は水に溶けた重炭酸と炭酸の量で、水の中の石灰分だと思えばよいと言い換えます。この二つが培地のpHにどう効くかを対比するのがこの回です。

酸の量を決めるもの: pH 9.3 の水と pH 8.3 の水を、どちらも硫酸で 5.8 まで下げた表が出ます。下げ幅が大きいのは前者なのに、要った酸は16オンス、下げ幅の小さい後者は69オンスでした。表の右端のアルカリ度と並べると、酸の量はそちらに沿って動きます。酸の量を決めるのは水のpHではなくアルカリ度だと動画は述べます(→pHの上げ下げ)。

7週間の培地のpH: 次に、アルカリ度が0・200・270の3種類の水で、ビンカに 13-2-13 の肥料を与え続けた例を出します。培地のpHは3つとも 5.3 から始まり、肥料と水と石灰分のぶんだけどれも上がりましたが、7週間後の上がり幅はおよそ1・2・2強と分かれました。アルカリ度が高い水ほど上がるのが速い、という並びです。

水のpHは効かない: そのうえで動画は、培地で育てる場合培地のpHと原水のpHのあいだにはまったく関係が無いと言い切ります。直に効いているのは水のアルカリ度のほうで、そこが高い水ほど培地のpHは速く上がり、低ければ肥料など入れたものの側が培地のpHを左右できると説明します。同じ結論を二枚の表のあとで繰り返しています。

水耕でどこが効くか: いっぽう水のpHは、水に含まれる微量要素の溶けかたを決めると述べます。とくに水耕では水そのものが植物の養分をとる場になるので、水のpHがきわめて大事だと言って動画は終わります。肥料を溶かす前の水を、pHとアルカリ度の二つに分けて読む——対比はそこへ行き着きます(→pHと養分の溶けかた)。