微量要素
組成と処方
必要な量は少なく、多すぎると害になります。鉄・マンガン・ホウ素・亜鉛・銅・モリブデン・塩素・ニッケルの8つは、足りる量と多すぎる量の幅が狭いものがあります。
何を担う成分・数字か
鉄・マンガン・ホウ素・亜鉛・銅・モリブデン・塩素・ニッケルの8つです。鉄とマンガンは葉緑素づくりと光合成の反応に、ホウ素は細胞壁と伸びる先に、モリブデンは硝酸を株の中で還元する酵素に要ります。亜鉛と銅も酵素の側で、塩素は葉の水の出入りに関わります。ニッケルは尿素を分解する酵素の一部です。多量要素とくらべると、要る量は一桁から三桁ほど下になります。要る量が少ないぶん、多すぎたときの害も早く出ます。
目安の範囲
HS796 のトマト向けは鉄2.8、マンガン0.8、ホウ素0.7、亜鉛0.3、銅0.2、モリブデン0.05 mg/Lです。ホーグランド処方のほうはホウ素0.5、マンガン0.5、亜鉛0.05、銅0.02、鉄2.9〜5 mg/L で、モリブデンは1938年の0.048 mg/L を1950年の改訂で0.011 mg/L へ下げています。同じ元素でも、資料と作物が変われば倍ほど違う値が並ぶということです。
動かすと何が変わるか
濃くしても育ちの側はあまり動かず、先に害の側が動きます。神奈川県の施肥基準(令和4年)は、培養液のpHが高いと鉄・マンガン・リンの欠乏症が出ると書いています。量の問題ではなくpHと養分の溶けかたで効きが変わる元素なので、足す前にpHを見る順番になります。入っているのに効いていない状態がありうる、というのがこの群のややこしいところで、見えかたは鉄とマンガンが効かないときに置きました。
測りかたと直しかた
EC計では読めません。塩素は水道水や井戸水にもともと含まれるので処方に入れなくてよい、と日本養液栽培研究会の会誌で寺林 2016 が書いています。銅の管や亜鉛めっきの継手を通る水も、その分だけ濃くなります。数字がほしいときは水質分析に出します。入れ過ぎた分は取り除けません。薄めるには更新と廃液で入れ替えるほかありません。
解説動画: 【微量要素について】窒素・リン酸・カリウムほど重要ではないけど、無いと困るんです。/Kiitos Farm
元素ごとの持ち場: 動画は要素を一つずつ持ち場で説明します。硫黄は酸化還元や成長の調整という生理作用に関わり、鉄と銅は葉緑素をつくる側。マンガンは代謝に関わる酵素に含まれ、葉緑素やビタミンの合成にも要ります。ホウ素は新芽と根の伸び、亜鉛は成長ホルモンを通じて新しい葉、モリブデンは根粒菌の窒素固定、塩素は光合成と病害への抵抗に関わると述べます。
欠けやすい二つ: 必要な量が少ないぶん、土の中にある程度あって欠乏はそれほど多くないと言います。その中で比較的欠けやすいのはマンガンとホウ素。土壌診断でもここまで細かくは調べない項目で、まず窒素・リン酸・カリウムの量を決めてから、足りなくなったぶんを補う順番でよいという立て方です。
症状はどこに出るか: 欠乏はたいてい葉に出ると述べます。黄色くなる・白くなる・先端が枯れるが多く、ホウ素や亜鉛のように伸びる先ではたらく元素だと、新しい葉や芽の伸びが悪くなります。モリブデンでは葉が湾曲したりねじれたりする、とも挙げます。ただしあくまで一例で、作物ごとに変わると釘を刺します。
足りないとは限らない: ここが山場です。症状が出ていてもその元素が足りないとは限らない。要素どうしに拮抗があるので、他の元素が過剰で吸収が落ちている場合がある、と述べます。鉄ならカルシウム・リン酸・マンガン・亜鉛・銅が相手で、そのぶん判断が難しくなる。見え方は鉄とマンガンが効かないときに並べました。
足す前に釣り合いを: 追肥で土に入れると固定されて効くまで時間がかかるため、症状が出てから足しても遅い、と言います。同じ量なら葉から入れたほうが早く効くとも述べます。すでに足りている元素まで一緒に入る配合が多いので多く与えすぎないようにしている、という順番は、養液を自分で組む側でもそのまま使えます。