防寒着

夜を過ごす道具

動かずに待つ観察は、歩く夜より深く冷えます。国立天文台の「流星群の観察方法」も、厳寒期には防寒着や寝袋までそろえるよう書いており、体温を自分で作らない時間が続くことを前提にした支度が要ります。

何が見えるようになる道具か

星を待つ夜は体をほとんど動かさないため、同じ気温でも歩いているときより早く冷えます。防寒着は熱を作る道具ではなく、自分の体が出した熱を逃がさずに抱えておくための道具です。国立天文台の「流星群の観察方法」も、厳寒期には防寒着や寝袋までそろえるよう求めています。寒さは指のこわばりと集中の切れとして先に出るので、暗順応の進んだ目のまま対象が高く昇るのを待てるかどうかが決まります。増えるのは、この待てる時間のほうです。

選ぶときに見るところ

重ね着の順で見ます。肌に触れる下着は汗を残さない化繊か毛、中間着は空気をためられる厚み、いちばん外は風を止められる面という三層です。効くのは外側で、風の抜ける生地では、中間着にためた空気ごと熱が持ち去られます。もう一つは手首・足首・首という熱の逃げ道で、袖口が締まるか、襟が首まで立つか、丈が腰を隠すかを見ます。リクライニングチェアで待つ姿勢では背中と腰が先に開き、頭からも熱は出るので、耳を覆う帽子も数に入れます。

使うときの注意

着ぶくれた腕では、双眼鏡のピントリングを細かく回せなくなります。厚い手袋のまま指先だけ出せる形にしておくと、暖かさと操作が両立します。汗も同じだけ効きます。暖房の効いた車を降りた直後は下着が湿っており、動かずに待つ姿勢に入ると、その湿りが冷えに変わります。着る量は歩く前に減らします。晴れて風の弱い夜ほど、放射冷却で地面に近い空気が下がるため、予報の気温より低いつもりで支度し、風があればさらに下がると見ておきます。

無いときの代わり

上着を足せないときは、風を止める側から埋めます。手持ちの雨具は生地が風を通さないので、いちばん外に着るだけで中間着の空気が保たれます。ごみ袋を一枚かぶるだけでも風は止まります。次に地面で、座り込むと接している面から熱が抜けますから、寝ころぶマットや畳んだ段ボールを一枚はさみます。アルミの面がある断熱シートなら一枚で足ります。それも無い夜は十五分ほど見て屋内や車内へ戻ると区切るほうが、結局は長く空を見ていられます。