使い捨てカイロ
夜を過ごす道具
防寒着が熱を守る側なら、こちらは熱を足す側です。指先が動くかどうかが、双眼鏡のピント合わせと星図帳を読む速さをそのまま決めるので、効き目は手のまわりに集まります。
何が見えるようになる道具か
体が作れなくなった熱を、外から足す道具です。防寒着が逃がさない側を受け持つのに対し、こちらは温度そのものを持ち込みます。差が出るのは指先で、かじかんだ指ではピントの追い込みがきかず、星図帳の紙もめくれません。手のひらに一つ握れるだけで構えた手の震えが減り、細かい操作が戻ります。中身は鉄粉が空気中の酸素と結びつくときの熱で、袋を開けた時点から反応が始まり、ポリ袋に戻して酸素を絶てば途中で止められます。
選ぶときに見るところ
貼る型と貼らない型の別が最初の分かれ目で、双眼鏡を握る手で持ち替えるなら貼らない型、腰や背に当てて芯を温め続けるなら貼る型です。次に包装の表示を見ます。使いすてかいろの日本産業規格(JIS S 4100)が項目と測り方を定めており、日本カイロ工業会の説明では持続時間は四十度以上を保った時間の平均、平均温度もその間の平均です。貼らない型で十八時間前後の表示が主流で、表示の温度は体感温度ではありません。
使うときの注意
低温やけどが、この道具のいちばんの危険です。日本カイロ工業会は、触れて心地よいと感じる六十度でも一分間圧迫を続ければやけどになり、五十度でも三分間の圧迫で起こると説明しています。四十二度でも六時間の接触で細胞が変わるという実験報告も挙げています。押しつけると血流が止まり、皮膚の温度が上がるためです。肌に直接当てず、リクライニングチェアで眠り込む使い方は避けます。
無いときの代わり
温かい飲み物があれば、内側から同じことができます。保温ボトルの一杯は握ったカップごと手を温めるので、握るものが無い夜の代わりになります。もう一つは体を動かすことで、その場で一分ほど足踏みをするだけでも末端に血が戻ります。手袋を外して手のひらをこすり合わせる、脇に手を差し込むといった手も同じ働きです。ただし汗をかくと、止まった後にその汗が冷えて元より寒くなります。息が上がる前でやめます。