ティコの光条
月の満ち欠けと地形
満月のころにだけ、いちばんよく見える地形です。月の南に寄ったクレーターから白い筋が四方へ伸び、欠け際にあるあいだは影に沈んで目立ちません。
いつ、どちらの空に出るか
ほかの地形と見ごろが逆になります。影で立体を読む地形は欠け際が良く、光条は太陽が正面から当たる望の前後がねらいめです。月齢でいえば十四から十六のあたりで、上弦や下弦のころは影に入り、筋がほとんど消えます。望の月は一晩じゅう空にいるので、時間帯のほうは選びません。同じ晩なら、月が南へ高く上がって大気減光の効きが弱まるころが、淡い筋まで追えます。
肉眼でどこまで見えるか
肉眼では、南に寄った白い点と、そこから広がる淡い筋が分かります。筋は月の面の半分ほどにわたって伸び、暗い海の上を横切るところでいちばん目立ちます。街明かりの強い場所や月の高度が低い晩は、筋の淡いところから順に消えていきます。同じ筋でも明るい高地の上に乗った区間は背景との差が小さく、途中から追えなくなります。探す順は、まず南寄りの白い点を押さえ、そこから筋をたどります。
双眼鏡で何が増えるか
双眼鏡では、筋が一本ずつ分かれてきます。中心のティコは直径85kmのクレーターで(国際天文学連合が1935年に採用、USGS Gazetteer of Planetary Nomenclature)、南の高地の中の白い点として位置が取れます。そらし目に切り替えると、淡い筋の側が拾いやすくなります。
ほかの星との見分けかた
月の白い筋はティコだけのものではありません。もう一つ目立つ光条はコペルニクスのもので、USGS Gazetteer of Planetary Nomenclature によれば、南緯43度・西経11度にあるティコに対し、コペルニクスは北緯10度・西経20度です。高地の中がティコ、海の中がコペルニクスと、位置で分けます。
よくある勘違い
光条を、月面に刻まれた谷や川と受け取る見方があります。見えているのは衝突で飛び散った物質が明るいまま残っているもので、高低の差ではありません。NASA が公開したハッブルの観測画像では、ティコを作った衝突はおよそ1億年前、縁は底から約5kmの高さとされています。高低の差なら欠け際で影が伸びるはずですが、光条は影の出る時期にかえって見えにくくなります。