月の海

月の満ち欠けと地形

月の暗い模様が、海と呼ばれてきた場所です。日本天文学会「天文学辞典」は、表側のアルベドの低い地域で、巨大衝突盆地を埋めた玄武岩質の溶岩からなると説明しています。

いつ、どちらの空に出るか

満ちていく月では、海は欠け際の側から順に姿を現します。日本天文学会「天文学辞典」によれば、海は月面の20パーセントほどを覆い、その大部分が地球を向いた表側にあります。模様の全体がそろうのは望に近い数日で、細い月のうちは端の一部しか出てきません。欠けていく月では逆で、先に現れた海から順に境目の向こうへ隠れます。見る時間帯も移り、満ちるあいだは宵の南、欠けるあいだは夜明け前の南になります。

肉眼でどこまで見えるか

肉眼で読めるのはこの暗い模様の形までです。うさぎやカニに見立てられてきたのは、まさにこの濃淡です。一つひとつの海の切れ目までは分かれず、いくつかがつながった大きな影として見えます。模様の向きは季節と時刻で回るので、いつも同じ姿で待っているわけではありません。模様を読むなら光の量が多い望の前後が向いていて、影の濃い細い月の晩とは見どころが入れ替わります。

双眼鏡で何が増えるか

双眼鏡になると、一つひとつの海が輪郭で分かれてきます。国際天文学連合の月面地名(USGS Gazetteer of Planetary Nomenclature)では、晴れの海が直径674km、静かの海が876km、危難の海が556kmと登録されており、丸く孤立した危難の海がいちばん切り出しやすい形です。

ほかの星との見分けかた

海と高地は明るさで分かれます。日本天文学会「天文学辞典」は、明るい高地が斜長石を多く含む岩石、暗い海が玄武岩質の溶岩からなると書いています。影との取り違えは、日をおいて見れば解けます。影は毎晩位置を変え、海は同じ場所にとどまります。細い月の日は月の欠け際の影が主役になります。白く伸びるティコの光条も高地の側の明るさで、海とは逆に周りより明るく見えます。

よくある勘違い

水をたたえた海だと受け取られてきましたが、月面に液体の水はありません。名前は17世紀の見立てが残ったもので、国際天文学連合の月面地名にラテン語のまま採られています。日本天文学会「天文学辞典」によれば、海を埋める玄武岩の厚さは1〜2kmほどです。見えている暗さは水の色ではなく、その玄武岩が光を返しにくいことから来ています。