月の欠け際
月の満ち欠けと地形
同じクレーターでも、欠け際にあるときだけ立体に見えます。明暗の境目では太陽の光が月面をかすめて当たり、影が長く伸びるからです。
いつ、どちらの空に出るか
見ごろは日付ではなく月齢で決まります。境目は毎晩少しずつ月面を移動するので、ひとつの地形が欠け際に来るのはひと月に二度です。暦計算室「暦Wiki 月の満ち欠け」の朔望月29.530589日がその周期で、上弦の月の前後と下弦の月の前後がねらいめになります。上弦の前後は宵の空、下弦の前後は夜明け前と、同じ地形でも起きている時間帯がまるごと変わります。
肉眼でどこまで見えるか
肉眼で分かるのは、境目がまっすぐではなくギザギザに見えることまでです。欠けた縁は刃物で切ったような線にはならず、小さな出入りのある輪郭として見えます。月が低いうちや大気の揺らぎが大きい晩は、この凹凸がにじんで、ただの直線に見えてしまいます。凹凸がいちばん分かるのは半月の前後で、細い月や望に近い月では境目そのものが短くなるか消えます。
双眼鏡で何が増えるか
双眼鏡では、影の落ちたクレーターの縁が数珠のように並びます。日の当たる縁だけが光って内側は暗いままなので、輪だけが浮いたような姿になります。同じ地形を数日おきに見ると、影の伸びが日ごとに変わるのが分かります。双眼鏡用の三脚に載せないと、この粒立ちは手ぶれで溶けます。境目から離れた明るい面では、同じクレーターが白い丸としてしか映りません。
ほかの星との見分けかた
境目と月の海の縁は、似て見えても別のものです。海の縁は明るさが緩やかに変わる境、欠け際は光そのものが途切れる線になります。迷ったら日をおいて見比べます。位置が動いているほうが欠け際で、海の輪郭は何晩たっても同じ場所にとどまります。同じ晩のうちに決めるなら、縁がギザギザに乱れているか、内側が黒く落ちているかを見ます。海の縁にその落ち込みはありません。
よくある勘違い
欠け際の凹凸を、月そのものが崩れていると受け取る見方があります。見えているのは影で、地形は望のころにも同じ場所にあります。地形の呼び名は国際天文学連合が決めた月面地名(USGS Gazetteer of Planetary Nomenclature)に載るもので、見え方が変わっても名前は変わりません。