ツバメが低く飛ぶと雨
音・生きもの・体の言い伝え
ツバメが見ているのは、空ではなく虫です。餌になる小さな虫の飛ぶ高さが上下すれば、それを追う鳥の高さもいっしょに動くので、飛び方は虫の高さの写しになります。
どう言われているか
気象庁 秋田地方気象台は、天体や動物にまつわる言い伝えの欄に「ツバメが高く飛ぶと晴れ、低く飛ぶと雨」を載せています。高い低いを対にした形で残っているのが特徴で、片方だけを取り出しても比べる相手がありません。同じ欄には雨がえるが鳴くと雨も並びます。人家の軒先に巣を作る鳥なので、毎日同じ場所で同じ個体の飛び方を見比べられることが、目印に選ばれてきた理由です。
空で実際に起きていること
ツバメが追っているのは飛んでいる虫であって、空模様そのものではありません。虫の飛ぶ高さが変われば、それを追う鳥の高さも変わるという順に並んでおり、空と鳥の間に虫という一段が挟まっています。虫の飛ぶ高さは気温や種類のほか、積雲が湧くような日中の上昇気流にも左右されます。よく添えられる「湿気で虫の翅が重くなって低く飛ぶ」という説明は、確かめられた観測が見当たらないため採りません。
どこまで当たるか/どんなときに外れるか
観察できる季節が、まず限られます。日本で見られるのは春に渡ってきてから秋に去るまでの間で、それ以外の時期はこの目印そのものが空にありません。巣に雛がいる時期は餌を運ぶ往復で低く速く飛ぶため、空の状態とは別の理由で高さが下がります。同じ場所と同じ時刻で何日も見比べ、高さの違いを記録に取るのでなければ、当たったかどうかを後から確かめられません。当たった日ばかりが記憶に残る危うさは、猫が顔を洗うと雨と共通です。
この言い伝えが見ている雲・現象
この言い伝えが届いているのは、地面の近くの空気の状態までです。気温や上昇気流、湿りぐあいが虫の飛ぶ高さを決め、その高さが鳥の飛び方に写ります。上層で何が起きているかまでは手が届かないので、雲の側は目で確かめることになります。虫そのものは遠くからでは見えず、鳥のほうが見やすい目印です。地面の近くの空気を読む点では、物の響きがよく聞こえると雨と同じ土台に立っています。