あかぎれが痛むと晴れ
音・生きもの・体の言い伝え
痛むのは、乾いた空気が来ているからです。冬型の気圧配置で北西の風が山を越えると、太平洋側には水分を落としたあとの空気が吹き下ります。
どう言われているか
「あかぎれが痛むと晴れ」は、気象庁 秋田地方気象台がことわざを集めた表の「その他」の欄に載せている一件です。あかぎれは指先や手のひらの皮膚が乾いて裂けたもので、この言い方は裂け目の痛む日を晴れの側と結びつけます。体の痛みを持ち出すことわざは天気の崩れる側を指すものが多く、晴れの側に振れているところがこの一件の変わっている点です。同じ欄の櫛が通りにくいと雨とは、空ではなく自分の体を手がかりにする作りが揃っています。
空で実際に起きていること
冬になると、気象庁の予報用語でいう「西高東低」の気圧配置が現れます。北西の季節風が日本海の上で水蒸気を拾い、雪雲に育ちます。その雲は列島の背骨にあたる山にぶつかって雪を落とし、山を越えた空気は水分を手放したぶん乾いたまま吹き下ります。太平洋側で晴れて湿度の低い日が並ぶのはこのためで、乾いた空気は皮膚の角層からも水を奪い、割れた指先は縁が引っぱられて痛みます。
どこまで当たるか/どんなときに外れるか
外れる入口は、まず地域です。同じ気圧配置でも日本海側は雪や雨になり、痛みと空が逆に並びます。乾いた風が吹き下りるのは山を越えた側だけで、風上にあたる海側では雲がむしろ厚くなるためです。もう一つは室内で、暖房が空気の湿りを下げれば、外が曇っていても指先は同じように痛みます。水仕事や手洗いの回数、手袋の有無でも割れは進みます。暖房を使わない時間帯どうしで比べたときに、外の乾きとようやく並びます。
この言い伝えが見ている雲・現象
この言い伝えがつかまえているのは晴れた空そのものではなく、山を越えて吹き下りた空気の乾きです。取り違えやすいのが「古傷が痛むと天気が崩れる」という逆向きの言い方で、こちらは湿りではなく気圧が下がることを見ているとされる別の一件になります。冬型かどうかは等圧線が南北の縦じまとなって混む形に出て、乾きの度合いは通風乾湿計の示す数字で確かめられます。