雨がえるが鳴くと雨
音・生きもの・体の言い伝え
鳴き声の大半は、雨ではなく繁殖の合図です。水辺に集まったニホンアマガエルの雄が雌を呼ぶ声で、湿りや気温の変化で鳴き出すことはあっても、目的は天気の知らせではありません。
どう言われているか
気象庁 秋田地方気象台の天体・動物の欄に「雨がえるが泣くと雨」の形で載っており、泣くの字は原文のままです。全国どこでも通じる言い方で、雨蛙という名前そのものが雨と結びついているため、名前が言い伝えを補強し、言い伝えが名前を裏づけるという輪ができています。同じ欄に並ぶツバメが低く飛ぶと雨と違い、声だけで分かり、姿を探さなくてよいところも使われてきた理由です。
空で実際に起きていること
鳴いているのは繁殖期のニホンアマガエルの雄で、声の大半は雌を呼ぶ求愛です。水辺に集まった個体が互いの声に応じて合唱になるため、一匹が鳴き出すと周りも続き、声の大きさは集まった数に左右されます。湿りや気温の変わり目、ほかの個体の声、車や機械の音をきっかけに鳴くこともあり、引き金は一つに決まっていません。空の状態を知らせているのではなく、生きものの側の都合が先にあります。
どこまで当たるか/どんなときに外れるか
当たる余地があるのは、湿りの増える時期と繁殖期が重なる春から夏です。裏を返せばこの季節の水辺でしか観察できず、秋から冬にかけては目印そのものが消えます。さらに雨の降っている最中にも、降ったあとにも鳴くため、声と雨の前後関係を後から並べ直すのが難しくなります。先に鳴いた例だけが証しとして残る数え方は、猫が顔を洗うと雨と同じ形です。
この言い伝えが見ている雲・現象
拾っているのは空ではなく、カエルの浸かっている水辺の湿りと気温です。地面の近くが湿って気温のゆるむ場面は、湿った空気が入ってくるときの状態と重なることがあります。ただし届く範囲はそこまでで、雲の高さや広がりは物の響きがよく聞こえると雨と同じく、空の側を別に見なければ分かりません。水辺から離れた場所では、同じ日でも声そのものが届きません。