櫛が通りにくいと雨
音・生きもの・体の言い伝え
髪が湿度計として働いています。毛髪は水蒸気を吸うと伸びてふくらむので、空気が湿った朝は櫛歯との摩擦が増し、通りが重くなります。
どう言われているか
気象庁 秋田地方気象台は、観天望気のことわざを集めた表の「その他」の欄に「櫛が通りにくいと雨」を挙げています。空も生きものも出てこず、自分の髪の手ざわりだけで空気の湿りを読む言い方です。同じ欄にはあかぎれが痛むと晴れのように体の感覚を手がかりにした一件が並んでいて、道具を持たない人が毎朝手にするものを測りの代わりにしてきた跡が残っています。
空で実際に起きていること
髪が吸っているのは水蒸気です。気象庁『気象観測の手引き』5.2.2 は、この性質を使った毛髪湿度計を説明していて、湿度が0%のときと飽和したときとを比べると、毛髪の長さは2〜2.5%変わるとしています。しかも伸びと湿度の関係は直線ではなく、同じだけ湿度が動いても、乾いた側と湿った側とで伸びの出方が違います。伸びた毛は太さも増すため、束ねた髪は櫛歯に引っかかります。
どこまで当たるか/どんなときに外れるか
同じ手引きは毛髪湿度計の弱点も並べていて、それは生きた髪でもそのまま起きます。湿度が上がるときと下がるときとで伸び縮みの出方がそろわないので、同じ湿り具合でも直前が乾いていたか湿っていたかで手ごたえが変わります。汚れの影響を受けやすいのも同じで、皮脂や整髪料が乗った髪は湿度と関わりなく重くなります。一人の髪を同じ櫛で同じ時刻に通したときの差なら、比べられます。
この言い伝えが見ている雲・現象
この言い伝えが見ているのは雨粒ではなく、自分の周りの空気にどれだけ水蒸気があるかです。低気圧や前線が近づく場面で下層が湿ることは観測から言えますが、湿っていても降るとは限りません。持ち上げる流れが無ければ雲は育たず、湿った空気は湿ったまま居座ります。同じ湿りを空の側から見たのが遠い山が近くに見えると雨で、湿度そのものは通風乾湿計で数字になります。