遠い山が近くに見えると雨

空の色と光の言い伝え

測っているのは、空気の透明度です。遠い尾根の輪郭がどこまで細かく見えるかで、その日の大気にどれだけ粒が浮いているかを読んできた言い方です。

どう言われているか

気象庁 秋田地方気象台の一般のことわざ欄にある一件で、「遠い山が近くに見えると雨」と伝わってきました。同じ欄に並ぶ夕焼けは晴れや朝焼けは雨が空の色を見ているのに対し、こちらが見ているのは色ではなく見通しの距離です。近くに見えるという言い方は、尾根の輪郭や斜面の陰影が細かいところまで分かる状態を指しています。

空で実際に起きていること

気象庁『気象観測の手引き』第10章は視程を、地表付近の大気の混濁の程度を見通しの距離で表したものと定めています。昼間は空を背景とした黒ずんだ目標を肉眼で識別できる最大距離で、観測は1kmまでは50mか100m刻み、1km以上はkm単位で行い、0から9の気象庁視程階級表に当てはめます。階級9は50km以上で、遠い尾根まで見える日はここに入ります。

どこまで当たるか/どんなときに外れるか

難しいのは、しくみが二つの向きで語られてきたところです。一方は湿った空気が入って粒が洗われ澄むという読み方、もう一方は湿るほど白く霞むという経験で、どちらも同じことわざの説明に使われてきました。同じ手引きは煙霧の中の相対湿度は75%未満のことが多いと書いており、乾いた粒で濁る側と、水滴に育って霞む側は別の現象として分けられています。

この言い伝えが見ている雲・現象

見ているのは山ではなく、その日の大気に浮いている粒の量です。見通しを下げる側の代表は煙霧や黄砂で、気象庁『気象観測の手引き』はどちらも大気じん象に分け、煙霧は肉眼では見えないごく小さい乾いた粒子が浮かぶ現象としています。雨や霧の粒とは別の分類なので、水と氷の図鑑ではなくこちら側の話になります。