塩をつけて握ると傷みにくい?

おにぎり

傷みにくくなるかは、まだ測られていません。

言われていること

塩には食品を保存する働きがあるので、手塩をつけて握ったおにぎりは傷みにくい、と家庭向けの記事や弁当の紹介で言われます。塩むすびが昔から持ち歩かれてきたこと、梅干しと並んで保存の知恵として語られてきたことが、その理由として挙げられます。夏の弁当では塩を多めに、という勧め方も見かけます。

測るとどうか

手塩の量を変えて日持ちを測った公開データは見当たりません。食品安全委員会のファクトシートによれば、黄色ブドウ球菌は食塩濃度16〜18%でも増殖し、条件がそろえば10%でもエンテロトキシンを産生します。増殖する温度は5〜47.8℃、毒素ができるのは10〜46℃の範囲です。おにぎり表面の塩は、塩蔵とは濃度の桁が違います。一方、培養実験では食塩の濃度に応じて増殖も毒素産生も抑えられました(Hu ら 2025)。

誰が・何を・どう測ったか

数値の出どころは食品安全委員会のファクトシート「ブドウ球菌食中毒」で、食品での実験ではなく専門書などをもとに整理されたものです。くらし科学研究所(2010年)の試験は、レトルトご飯に菌を接種して25℃・35℃で置き、10⁶個/g程度で毒素が作られ始めたものです。塩の条件は書かれていません。手塩の量を変えて、常温で置いたおにぎりの菌数や官能評価を比べた試験は、公的機関にも学会誌にも確認できませんでした。

だからどうする

塩をあてにせず、温度と時間と手の清潔で守ります。黄色ブドウ球菌の予防として、東京都も大阪府も10℃以下での保存を挙げています。粗熱を取ってから包み、涼しい場所に置き、その日のうちに食べる。塩は味を決めるものなので、日持ちを理由に量を増やしません。常温で持ち歩く時間が長い日は、保冷剤を添えて持ち歩きます。HBCニュースは道立衛生研究所の話として、握ったあとラップの端を開けて蒸気を逃がすよう伝えています。

まだ分かっていないこと

表面の塩がどれだけ水分活性を下げるのか、そもそも下がるのかが測られていません。梅干しや塩鮭のような具の塩分が、握った米の側へ移るのかも分かっていません。塩の量と、包み方や置く温度のどちらが効くのかを同時に比べた資料も見当たらず、何時間までという目安も、気温による違いも出せません。培養実験で塩が効いた濃度は要旨に書かれておらず、手塩の量との対応も分かりません。

出典

  1. 公的機関 東京都保健医療局 黄色ブドウ球菌(食品衛生の窓)
  2. 公的機関 大阪府 ブドウ球菌による食中毒を防ごう!
  3. 論文・英語 Hu Z ほか(International Journal of Molecular Sciences)(2025) Effects of Nutritional Conditions on Growth, Biofilm Formation, and Enterotoxin Production in Staphylococcus aureus Associated with Food Poisoning
  4. 資料 くらし科学研究所(2010) 「おにぎり」に付いた黄色ブドウ球菌による食中毒リスクの調査
  5. 動画 HBCニュース 北海道放送 自分で握ったおにぎりで“食中毒”ラップを使い、具も傷みにくい梅おかかをチョイスしたのに…夏は気温だけでなく湿度にも注意