覚える・保つ・思い出すの3つの段階。
覚える仕組みは、入れる・保つ・引き出すの三段階に分けると見えやすくなります。記憶のリハビリ研究に取り組むキアラヴァロッティ氏は、記憶を符号化・固定化・想起の三段階に分け、記憶の失敗の大半は最初の段階で起きると説明しています(Nancy D. ChiaravallotiのTEDxHerndon講演)。符号化と想起が指す「しまう」「取り出す」の区別も、この三段階の言い換えです。
1985年にヘルペス脳炎で記憶に重い障害を負った英国の音楽家クライヴ・ウェアリングの例を、CrashCourseの解説動画は紹介しています。妻に会うたびに初めて会ったかのように喜ぶ一方、英語を話す力やピアノを弾く力は保たれていました。この分かれ方が手続き記憶と宣言的記憶の境目で、言葉で言える記憶と、体が覚えていて言葉にしにくい記憶は別の仕組みで保たれると、同じ動画は説明しています。
入れる段階の狭さも、この動画は説明しています。新しく入れた情報をそのまま置いておける作業記憶の容量は、数字にすると4から7個ほどに限られます。並べた数字をひとまとまりの年号として覚えると一つ分で済む、という例が挙げられ、これがチャンクの働きそのものだとしています。
入れ方の深さも結果を左右します。見た目や音だけで覚える浅い処理より、意味と結びつける深い処理のほうが長く残ると、CrashCourseは比べています。キアラヴァロッティ氏の講演も同じ側に立ち、覚えたい用件を一つの場面やイメージに結びつけてまとめると、別々に覚えるより残りやすいと、通勤前に抱える五つの用件を一枚の絵にまとめる例で示しています。
引き出す段階では、教材を閉じて自分の頭だけで思い出す練習が鍵になります。星友啓氏は、読み返すだけでは二回目以降の効果がほとんど無いのに対し、閉じて思い出す練習を挟むと記憶の定着が1.5倍から2倍ほど上がったとする研究があると紹介しています(PIVOT 公式チャンネル)。思い出す動作そのものが記憶を強めるという見方は、符号化と想起の想起側の働きと重なります。
保つ段階は記憶の固定化と呼ばれ、思い出さずに時間だけが過ぎると記憶は薄れていきます。安川康介氏の勉強法の本を解説するフェルミ漫画大学の動画は、時間が経つほど覚えた内容を忘れていく働きを忘却曲線として紹介し、一度に詰め込むより日を分けて繰り返す方が定着に有利だと説明しています。
出典
- 動画・英語 CrashCourse How We Make Memories: Crash Course Psychology #13
- 動画・英語 Nancy D. Chiaravalloti(TEDx Talks) Techniques to Enhance Learning and Memory | Nancy D. Chiaravalloti | TEDxHerndon
- 動画 星友啓(スタンフォード・オンラインハイスクール校長、PIVOT 公式チャンネル) 【200以上の研究から評価した効果的な勉強法】線引き・読み直しで暗記はNG/テストは学びを生み出す道具である/スタンフォード・星友啓氏が解説【EDUCATION SKILL SET】
- 動画 フェルミ漫画大学(安川康介の著書の解説) 【要約】科学的根拠に基づく最高の勉強法【安川康介】