読む・覚える・集中する・時間を管理する・体を整えるの5つのつながりを一望する。
学びと仕事の技は、読む・覚える・集中する・時間を管理する・体を整えるの5つに分かれて並んでいますが、実際は一本の鎖としてつながっています。どれか一つが弱いと、残りをいくら鍛えても効果は頭打ちになります。
読む速さと理解の正確さにはトレードオフがあり、通常の2〜3倍の速さで読みながら同じ理解を保つのは難しいとされています(Rayner ほかの2016年のレビュー)。速さを上げる近道は眼球運動の訓練ではなく、語彙と背景知識を増やして内容の見通しを良くすることだと、このレビューは位置づけています。読んだ内容を記憶に移すときも、読み返すより思い出す練習で思い出し、間をあける練習で日をまたいで繰り返すほうが定着しやすいと評価されています(Dunlosky ほかの2013年のレビュー)。外科の研修医を、同じ学習時間で1日に詰め込む群と4週間に分けた群に分けた実験では、分けた群のほうが1か月後の手技の出来が良かったという報告があります(TED-Edの解説動画)。
覚える作業は、集中できていなければ始まりません。読んでいる最中に別の画面を見る「ながら」は、せっかく思い出す練習をしても、記憶として固まる前の情報を崩してしまいます。ながら勉強をやめることと、学んだ直後に短い休憩をはさむことの両方が、新しく覚えた情報が消えずに残るための土台になります(神経科学者ランドウスキーのTEDx講演)。
取り組む時間帯や量を決める計画も、覚え方や集中のやり方を左右します。先延ばしを「時間の使い方が下手」と見るより、課題への嫌悪感や自己効力感のような気分に近い要因で起きると見るほうが、691の相関を集めたメタ分析の結果に近いとされています(Steel の2007年のメタ分析)。先延ばしを気分の問題として見るの項目は、時間管理の技を覚える技や集中の技と同じ並びで扱う入口になります。
体の状態は、覚えた内容を一晩でどれだけ残せるかに関わります。新しく覚えた情報は眠っている間に別の場所へ移されて安定するといわれ、眠って記憶を固めるうえで睡眠時間を削らないことが前提になります(TEDx講演)。1回の運動が認知課題の成績に与える効果は全体では小さいものの正の方向にあり(Chang ほかの2012年のメタ分析)、学ぶ前に歩くことや学んだあとに動くことは、集中や記憶の技を支える位置づけで使うと無理がありません。
出典
- 論文・英語 Rayner, Schotter, Masson, Potter, Treiman(Psychological Science in the Public Interest)(2016) So Much to Read, So Little Time: How Do We Read, and Can Speed Reading Help?
- 論文・英語 Dunlosky, Rawson, Marsh, Nathan, Willingham(同誌)(2013) Improving Students' Learning With Effective Learning Techniques: Promising Directions From Cognitive and Educational Psychology
- 動画・英語 TED-Ed 3 tips on how to study effectively
- 動画・英語 Lila Landowski(TEDx Talks) Brain Hack: 6 secrets to learning faster, backed by neuroscience | Lila Landowski | TEDxHobart
- 論文・英語 Steel(Psychological Bulletin)(2007) The nature of procrastination: A meta-analytic and theoretical review of quintessential self-regulatory failure
- 論文・英語 Chang, Labban, Gapin, Etnier(Brain Research)(2012) The effects of acute exercise on cognitive performance: a meta-analysis