似た仕事の実績から見積る
見積り
頭の中の段取りではなく、前に似たことにかかった時間から出す
どんな技?
見積るときに、頭の中で段取りを思い描くのをやめて、前に似たことにかかった実績を並べます。同じ分量の章を読んだのが何時間だったか、似た書類を仕上げたのが何日だったかを、記録された数字のまま拾います。今回だけ特別に速く進む理由は数えません。手元に実績が無いと使えない技なので、その場合はまず測る側から先に始めます。
なぜ効くのか
自分の段取りを想像するとうまく運んだ筋道だけが浮かびやすく、割り込みや手戻りが数に入りません。実績の分布を見る形にすると、過去に起きた邪魔ごとが数字の中に最初から含まれています。自分の予測を外側から点検するメタ認知の使い方で、当てにする材料が想像から記録へ移ります。実績の散らばりも同時に見えるので、そこは幅で見積もるに渡せます。
やり方
似た仕事を3件から5件選び、それぞれ実際にかかった時間を書き出します。真ん中あたりの値をそのまま今回の見積りに置き、今回だけの上乗せは理由を書ける分だけにします。手元の実績が足りないうちはかかった時間を記録するを先に回して、材料のほうを先に作ります。工程ごとに足し上げたいときには、作業に分けて数えると組み合わせます。
はまりどころ
見積りが甘くなること自体は何十年も再現していますが、この直し方が検証されたのは大型の建設や交通事業です。個人の勉強や仕事で何%正確になるという数字はありません。似ていない仕事を実績に混ぜると外れ方が大きくなるので、分量と種類をそろえてから並べます。受注仕事の値づけは別の話なので、ここでは時間だけを見ます。
確かめられ方
Buehler らが1994年に行った一連の研究で、学生の課題や卒論の完成は自分の予測より遅れ、「まず確実」と考えた期日に間に合った人も少数でした。直し方として挙げられる参照クラス予測は、Flyvbjerg らが2002年に調べた258件の大型交通事業の費用超過が土台で、英国運輸省などが実務に採り入れています。対象が公共の大型事業なので、個人の作業に当てはめた検証は少ないままです。
解説動画(海外・英語): Why Your Project Estimates Are Wrong | Planning Fallacy & Reference Class Forecasting/Things Less Obvious
前回も三か月: 次の案件は三か月で終わる、と言い切る場面から始まります。相手が前回も三か月と言って実際は六か月かかったと返すと、あのときはインフラの問題など想定していなかったことがあっただけで今回は違う、という答えが返ってきます。この「今回は違う」がどこから出てくるのかを、見積りと予測の話としてほどいていきます。
着手時が最も不確か: そんなに未知が多いのに見積る意味はあるのか、という問いに返されるのが不確かさの円錐です。仕事の始まりで不確かさがいちばん大きく、進むにつれて下がりうる。ただし放っておいて下がるものではなく、自分から減らしにいく必要があると補われます。1981年のソフトウェア開発の研究では、着手時点の幅は当初の計画より大きく延びうるほどだと評価されたと紹介されます。
内側から見る誤り: 分かっていても遅れる理由として挙がるのが計画錯誤です。Tversky と Kahneman が1979年の論文で触れており、そこでは分布の情報を軽く見たり無視したりする傾向こそが直感的な予測のおそらく最大の誤りだと書かれている、と引かれます。動画はこの「分布の情報」が何を指すのかを、例で開いていきます。
外の目に切り替える: 例は、話し合いを重ねて三か月と見込んだ班です。似た仕事は前にどれくらいかかったかと問うと六か月、十二か月、十か月、九か月。今回の班と計画は当時よりどれだけ良いかと問うと、だいたい同じ、よくて少し上。ここで現実的な線が六か月以上へ動きます。この外側からの問いを外の目と呼び、手順にしたのが参照クラス予測だと述べます。
材料と届かない所: 手順は、似た過去の仕事の集まりを決め、その分布を出し、目の前の仕事を分布と突き合わせる、の三つ。分布には材料が要りますが、請求などの都合でかかった時間を記録するをすでにやっているなら、それを捨てずに使えと言います。ただし件数を数えるやり方の裏づけは体験報告どまりで、多くの班がからむ大きな案件は予測だけでは足りないと結びます。