先延ばしを気分の問題として見る

先延ばし

先延ばしは時間管理の失敗ではなく、嫌な気分の避け方

どんな技?

取りかかれない作業を前にして、予定表を開く代わりにその作業の何が嫌なのかを一行で書きます。やり方が分からない、下手だと思われる、終わりが見えない、といった具体の言葉まで下ろします。書けたら、その嫌さを小さくする手をひとつだけ選んで置きます。予定の組み直しから入らないところが、この見方の要点です。時間の使い方より気分の扱いを先に見ます。

なぜ効くのか

手が出ない場面では、先の得よりもいま感じている嫌さを避けるほうが優先されていると説明されています。相関を集めたメタ分析では、作業の嫌悪感やとりかかりの遅れ、衝動性が先延ばしと結びついていました。Sirois と Pychyl 2013 はこれを短期の気分の立て直しの優先として整理し、直す先を予定表ではなく作業の中身の側に置きます。メタ分析で見えるのは関係の強さで、原因の向きまでは決まりません。

やり方

先延ばしている作業をひとつ選び、3分で嫌さの正体を書き出します。次に、その正体に合う手をひとつ選びます。やり方が分からないなら調べる一歩に置き換え、終わりが見えないなら作業に分けて数えるに回します。下手だと思われるのが嫌なら、人に見せない下書きから始めます。手をつける瞬間だけを軽くする五分だけ手をつけると重ねると、選んだ手が動き出しやすくなります。

はまりどころ

これは見方の枠組みで、見方そのものを対照群と比べた検証ではありません。嫌さの正体を書いても、そのあとの手が用意できていなければ確認だけで終わります。嫌悪感が単独でいちばん強い要因とも書けず、誠実性やその下位側面のほうが強い関連を示しています。予定表の工夫がいらないという話でもありません。生活に支障が出るほど続くなら、専門家に相談する範囲として扱います。

確かめられ方

Steel 2007 は691件の相関を集めたメタ分析で、作業の嫌悪感・とりかかりの遅れ・自己効力感・衝動性・誠実性が先延ばしと結びつくと示しました。集めたのは自己申告どうしの相関で、原因の向きは決まりません。感情の扱い方を訓練した無作為化試験では先延ばしが減り(Eckert ら 2016)、介入のメタ分析でもっとも減らしたのは認知行動的な介入でした(van Eerde と Klingsieck 2018)。

解説動画(海外・英語): How to Stop Procrastinating - Solving The Procrastination Puzzle - Timothy Pychyl/Practical Psychology

先延ばしの定義: 動画は先延ばしを、先の目標を損なうと分かっていながら決めた行動を自分から遅らせることと定義します。自己申告を集めた調査では、先延ばしが多いと答えた人ほど成し遂げた度合いを低く答えていて、仕上がる量そのものが減る。しかも別のことをしている最中も後ろめたさが付いてくると述べます。

いまの気分を直す: では、なぜ自分の目標のほうを後回しにするのか。動画はこのねじれを認知的不協和と呼び、いま楽なほうを選ぶのはその場の気分をすぐ立て直したいからだと説明します。長い目で見た目標を代価にして、目の前の気分を取る形です。報われた行動はくり返されるので、先延ばしはやがて習慣として固まると続けます。

明日はやる気に: よく出る言い訳が「明日になればやる気になる」です。そう見通した時点で気分は良くなりますが、実際にそうなるとは限りません。ねじれをやわらげるとき人は行動ではなく考えのほうを動かし、もっと悪い結果もあり得たと言い、責任を他人に移し、別のことへ気をそらす。動画は考えのほうに行動を合わせ直せと言います。

圧力に強い説: もう一つの言い訳が「追い込まれたほうが良い仕事ができる」です。動画は、時間が短いほど誤りが増えるという報告を挙げます。月曜に課題への気持ちを尋ね、締切の金曜に同じ人へ聞き直した調査では、圧力に強いと答えていた側がもっと時間がほしかったと述べ、うまくやれたとは言いませんでした。締切前だけの集中は自分への嘘だという扱いです。

始めるだけにする: 締めは「やり切れ」ではなく始めるだけ。全部を一度に片づけると考えるから怖くなるので、入口だけを見る。始めてしまえば思ったほど嫌ではなく、少し進んだという良い気分が次の力になると述べます。先延ばしたくなったら10分だけ触る合図と受け取る、五分だけ手をつけると同じ形です。いまの気分を立て直したくて延ばすのなら、直す先も気分の側だという着地です。