論文の読み方
本以外を読む
頭から読まず、要旨・図表・方法の順に必要な所を取る
どんな技?
頭から順に読まず、要旨で主題と結論をつかみ、図表で結果の大きさを見て、必要になったら方法へ戻ります。先に自分の知りたいこと(効くのか、誰に効くのか、どれくらいか)を決めておくと、戻る場所が決まります。仕様書やマニュアルも構成が決まっているので、同じ拾い方ができます。全文を通すのは、これは使うと決めたあとで足ります。
なぜ効くのか
論文は決まった型で書かれるので、知りたいことの置き場所が最初から分かっています。結論の強さを決めるのは文章のうまさではなく、対照群とランダム化と対象の人数です。そこを先に見ると、著者の主張と実際に示された範囲のずれが見えます。図表と表題だけで、その論文が自分に関係するかはおおむね決まります。ただし読む順序そのものが効くという話ではありません。
やり方
まず要旨を読み、何と何を比べた研究かを一言で言えるようにします。次に図表と表の見出しを見て、効果量や差の大きさが書かれているかを確かめます。対象が何人でどんな人かを方法から拾い、最後に考察の言い過ぎを切り分けます。分野の言葉が分からなくても、比較と人数と数字は追えます。図の軸と単位は図表を読むの手順で確かめ、15分ほどで一巡します。
はまりどころ
1本の論文で分かることは限られます。1本ずつ拾う前にメタ分析でまとめられていないかを探すと、向きを取り違えにくいです。出版バイアスがあるため、効いた報告のほうが世に出やすい偏りも残ります。1本の結果を自分の状況にそのまま当てるのも早すぎます。この読み順自体は比べられていないので、好みの範囲として扱います。
確かめられ方
読む順序を比べた実験は見つからず、この読み方の効き目は未検証です。確かなのは書き方の共通性で、要旨・方法・結果・考察という構成や査読の有無、対象者数や比較群の示し方は分野をまたいでほぼ同じです。報告の細かさは分野で変わるので、これは効くと確かめられた手順ではなく、共通する形式を利用した拾い方という位置づけになります。
解説動画(海外・英語): How to Read Economics Research Papers: Randomized Controlled Trials (RCTs)/Marginal Revolution University
何を比べた研究か: 学術誌の論文は、初めての人には見慣れない言語のように見えるところから始まります。例に取るのは、士官学校の経済学の授業で電子機器の使用を無作為に割り当てた研究です。ノートパソコンもタブレットも持ち込まない従来どおりの教室が対照群、使用を許した教室が介入群で、測る結果は期末試験の点だと先に決めてあります。
最初の表の見方: 経済学の論文はたいてい記述統計の表から始まると言います。はじめのほうの列は各群の平均で、実験の前に測った特徴が並びます。平均年齢は20歳すこし、女性かどうかのように0か1で表す変数では、平均がそのまま割合になる。何がどの列に載っているかは表の注に書いてあるので、そこを見ながら表をたどります。
群が揃っているか: 続く列は、実験に入る前の時点で両群の特徴に差がないかを検定した結果です。目安は推定値が標準誤差の2倍を超えるかどうかで、ここではどの差も届いていません。許された側が実際に端末を使ったかを示す欄もあり、使っていなければ介入そのものが無いことになると言います(対照群とランダム化)。
効いたかを見る表: 本題の表には、電子機器の使用が学びに与えた効果の推定値が並びます。調整する変数を無しから順に増やして列を並べるのが慣例だそうで、年齢や性別、これまでの成績を加えても符号が負のままかを見ます。最初の列では期末の点が0.28標準偏差下がっていました(効果量)。
星印はどう読む: 標準偏差という単位を使うのは研究どうしを比べやすいからで、数字の脇の星は偶然で出にくいことの印です。三つで1%、二つで5%、一つで10%の水準を表し、近ごろは古めかしいとして載せない雑誌もある。適合度の指標などは今は飛ばしてよいと言い、表は追えば読めると結びます。