水面の波

波と不安定

形だけが進み、水はほとんど進まない動き

どんな現象?

水面が上下すると、その形だけが横へ伝わっていきます。浮かべた木片は前へ進まず円を描いて戻るだけで、運ばれているのは水そのものではなく形と勢いです。指の幅ほどのさざ波は表面張力が、数十メートルのうねりは重さが、それぞれ水面を平らへ戻そうと働いています。

なぜ起きるか

盛り上がった水は重さで押し下げられ、勢い余って下がりすぎ、今度は周りの水に押し戻されます。この行き過ぎの繰り返しが隣へ隣へと渡っていくのが波です。深い海では長い波ほど速く進むため、遠くの嵐が作った波はうねりだけが先に届きます。浅いところでは底が動きを邪魔して速さがそろい、後ろが追いついて波は立ち上がり、深さの八割ほどの高さで崩れます。風が波を育てる細かい道すじは、まだ決着していません。

どこで見られるか

池に石を落としたときの輪、風が吹き始めた水面にできる細かいしわ、海岸に届く周期の長いうねり。船が通ったあとや波が砕けるところでは、いくつもの波長が重なって形が読みにくくなります。港の内側でも数十秒おきに水面が静かに上下していることがあり、じっと見ていると気づきます。

勘違いしやすいところ

波が水を運んでいると思われがちですが、運ばれるのは形と勢いです。ただし完全にゼロではなく、波の進む速さの数パーセントほどのゆっくりした漂流は残ります。速さの言い方も紛らわしく、山一つの速さと群れ全体の速さは別で、深い海では群れのほうが半分ほど遅く、勢いが伝わるのはこちらの速さです。遠くのうねりが先に届くのは群れが遅いからではなく、長い波ほど速いためです。

解説動画: 水波理論/線形水波理論8/位相速度と群速度/On water waves

波には二つの速さがある: 波には、山が進んで見える位相速度と、エネルギーが伝わる群速度の二つがあります。分散性のない波では両者が一致しますが、深い海の波や有限水深の波では一致しません。動画はこれを歩く人にたとえます。振っている手足の速さは、体が前へ進む速さより速い。一つの現象に二つの速さがあるのは、そう不自然ではないという導き方です。

山は先頭に着くと消える: 左から右へ進む波の動画で、山を一つ決めて目で追うと、その山は後ろから前へ追い抜いていき、先頭に届いたところで小さくなって消えます。群れ全体は群速度で進むので、それより速い位相速度で走る山は先頭より前には出られないわけです。お風呂で波を立てても観察できる、と動画は勧めています。

ニュージーランドのうねりが届くまで: ニュージーランド沖で立ったうねりがアメリカ西海岸に達した観測で確かめます。周期は約15秒、分散関係から波長は350メートルほど。群速度は位相速度の半分で時速42.1キロメートル。約1万キロメートルの距離から出した到達予測は254時間で、実測の約255時間とほとんど差がありません。

津波は深さで速さが決まる: 浅水波は分散性が無く位相速度と群速度が一致するので、水深と重力だけで速さが決まります。深い所では時速297キロメートルで、飛行機と同じくらいだと動画は言います。浅くなるほど落ちて、岸近くでは人が走るくらいです。波の前側より後ろ側が速いために波高が育つので、気象庁の予測では水深に波高を足して計算します。

減衰が遅いから遠くまで届く: 1万キロを伝わってなお残るという事実から、海の波は地球の規模で見ても大きな現象で、減衰が遅いことが分かります。南半球で立ったうねりに北米西海岸の人が乗っている、という話でもあり、サーフィンと波は遠い海で生まれたうねりにつながっていることになります。到達時間の計算は群速度で、という一点が要です。