ケルビン・ヘルムホルツ不安定
波と不安定
速さの違う層が滑るところに並ぶ波
どんな現象?
速さの違う二つの層が重なって滑るとき、境目に同じ間隔の波が並び、先端がそろって同じ向きに巻き込みます。空では雲が横一列のかぎ状になって数分から十数分で消え、水では風に押された表面が崩れる縁に現れます。並ぶ間隔は層の厚みと速度差でだいたい決まり、条件が続くうちは驚くほど整って見えます。
なぜ起きるか
境目にできたわずかなふくらみの上では通り道が狭まり、速さと低い圧力が同時に成り立ちます。上から押し返す力が弱まるぶん、下側の圧力に押されてふくらみはさらに伸び、伸びるほど押し返しが弱まる育つほど育つ関係に入ります。重さの差と粘りは形を引き戻す側に働くので、速度差がそれに勝ったときだけ波が伸び、先端が追い越されてかぎ形の渦の列になります。巻いたあとの乱れ方は、まだ完全には計算しきれません。
どこで見られるか
空では、風の向きや速さが食い違う高さに現れる規則正しい巻き雲の列が典型で、朝夕の斜めの光で影がつくと見つけやすくなります。身近ではコーヒーに落としたミルクの縁がぎざぎざに巻く様子、湯と水が混ざりきらない風呂の境目、濁った水が澄んだ川へ流れ込む縁でも見えます。並ぶ山は五つから十ほどのことが多く、気づいたらすぐ見るのが肝心です。
勘違いしやすいところ
雲の波は下から吹き上げられた跡だと思われがちですが、層どうしが滑っている印です。必ず渦になるとも限らず、重さの差が大きい落ち着いた層では波のまま消えていきます。並ぶ間隔は風の食い違いを読む手がかりになりますが、数値までは決められません。起きているのは上空なので、足元が無風でも現れます。
解説動画(海外・英語): Kelvin Helmholtz Instability (NC)/Fluid Dynamics
起きるのは速度差があるところ: 一つの続いた流体の中にせん断があるとき、あるいは密度の違う二つの流体の界面に速度差があるとき、この不安定は起こりうる。動画が例に挙げるのは、水の上を流れるとき、雲、土星の縞模様、そして絵の中のゴッホの「星月夜」。まず密度の違う二つの流体の場合から入る。
傾けた水槽で起こす: 実演では、密度の違う二つの液体を入れた水槽を最初は静止させておく。そこから傾けると、重いほうが下へ、軽いほうが上へ動きだし、そこで初めてせん断が生まれる。せん断は層のあいだで運動量を受け渡し、二層の境目に波が立ちはじめる。
波が渦を生み、砕けて混ざる: せん断が残っているかぎり波は育ちつづける。せん断は界面に渦度を生み、時間とともに流れは不安定さを増す。波が十分に大きくなると、そこにある速度場が波を砕きにかかる。これが内部の砕波で、砕波そのものは速やかに減衰し、あとには二つの層の乱流混合が残る。
いつ不安定になるか: ナビエ–ストークス方程式を粘性なし・渦なしの流れとして扱うと、時間を含むベルヌーイの式が出てくる。そこから導かれる条件は、二層の速度差の2乗が、重力と二つの密度と波数で決まる量を上回ること。満たすには二つの速さが等しくないことに加えて、波数が大きいこと——つまり波長が短いことが要る。短い波ほど成長が速い。