跳水

波と不安定

見られる場所: 家の中 / 大きさ: 手のひら

跳水は、浅く速い流れが急に厚くなる段差。

どんな現象?

台所の流しに水を落とすと、当たった点から薄くて速い円い膜が広がり、数センチのところで急に段差ができて、その外側は厚くゆっくりになります。内と外で深さが数倍違うので、指を置くと手ごたえの違いが分かります。川では堰の下に、幅いっぱいの白く泡立つ段差として現れます。同じ段差は人工物がなくても起き、大きな岩や川底の急な変化がきっかけになれば自然の川にも現れます。アメリカの大学が岩盤の川で調べた研究では、流れをせき止めるものと、それに見合う水量の両方がそろえば跳水ができると報告されています。

なぜ起きるか

薄くて速い流れの中では、波は上流へ戻れません。下流の厚い水が行く手をふさぐと、どこかで速さが落ちて、波が上流へ戻れる状態に切り替わります。切り替わりは滑らかにはつながらず、段差として現れ、行き場を失った勢いが渦と泡と熱に化けます。段差の位置は下流をどれだけせき止めているかで決まり、フルード数が1をまたぐ場所が目印です。段差の手前の薄く速い流れは専門用語で射流、奥の厚くゆっくりした流れは常流(亜臨界流)と呼ばれ、なめらかに変わる場所でなら保たれるはずの流れの押す力は前後でほぼ保たれる一方、水が持っていたエネルギーの方はここで大きく失われます。泡の巻き込み量までは、まだ精度よく予測できません。

どこで見られるか

流しに水を当てたときの直径数センチの円い縁、ダムの下流に作られる減勢のための池、堰や落差工の下、ホースの水を平らな地面に当てたとき。用水路や魚道では、わざと段差を作って勢いを削り、下流の底が削られるのを防いでいます。皿を近づけると円が小さくなるので、下流の効き方がその場で確かめられます。水理学を扱うYouTubeチャンネルiLab.は、明治時代に作られた琵琶湖疏水の急な区間で、水の速さを抑えるために跳水を利用する設計が採られたと説明しています。

勘違いしやすいところ

輪は表面張力が作ると思われがちですが、堰の下のような大きな段差では主役が流れの速さと深さの釣り合いです。ただし流しほど薄い膜では表面張力の効き方に議論が残っています。円がゆがむのは、流しの傾きや下流側の水位のむらのため。堰の下の白い段差は非常に危険で、泡を含んだ水は浮きにくく、流れが戻る向きに人を巻き込みます。見た目で判断しないでください。アメリカ開拓局の資料では、ダムの減勢池は下流側の水位が足りないと段差そのものが下流へ押し流され、川底や構造物の基礎が削られる危険が増すとされ、位置は目分量ではなく水位で管理されています。

出典

  1. 資料・英語 Gregory B. Pasternack, Brett L. Valle(UC Davis)(1999) Assessment of the Structure and Function of Natural Hydraulic Jumps
  2. 公的機関・英語 U.S. Bureau of Reclamation(2012) Stilling Basin Performance (Research and Development, Project ID 4925)
  3. 動画 東京理科大学社会基盤工学科Urban Climate Lab. 開水路流れ急変流4
  4. 動画 iLab. 【水理学 No.8】開水路流れの基礎|フルード数・比エネルギー・跳水を一気に理解

解説動画(海外・英語): Radial Hydraulic Jump Interrogator Lecture (Video 4 of 7)/GatorKits Lab - UF

台所のシンクで撮った実験: 講義の担当者は、自分の台所のシンクで跳水をつくる様子を撮って学生に見せている。特別な装置は何もいらないという念押しで、蛇口をひねればほぼ毎回あの輪ができている。全7本の講義の4本目にあたるこの回は、その見慣れた輪をレイノルズ輸送定理から出てくる保存則で説明し直す。

射流から常流へ移る境目: 水は中心から外へ広がるにつれて速さを落とし、それにつれてフルード数が下がる。この数が1を横切るところで流れは超臨界(射流)から亜臨界(常流)へ移り、その乗り換えが起きる境界そのものが跳水だと説明される。円い跳水の半径は、まずこの切り替わる位置で決まる。

半径を決めるもう一つの条件: 半径を決めているのはフルード数だけではない、というのがこの回の主題。円形の跳水は質量保存と運動量保存を同時に満たさなければならず、その両方が成り立つ場所に半径が落ち着く。二つの式はどちらもレイノルズ輸送定理という同じ枠組みから出てくる。

検査体積と入口・出口の力: 解析では跳水をまたぐ領域を検査体積に取り、その点線の境界が検査面になる。運動量保存では境界を出入りする運動量だけでなく境界に加わる力も数えるので、入口と出口にかかる静水圧を三角形で描き込む。図に並ぶ変数はノズルの直径、そこから落ちてくる水柱の直径、跳水の前後の半径と前後の水深、前後の速さ。