渦輪

渦と後流

ドーナツ状に回りながら遠くまで進む渦

どんな現象?

輪ゴムのような形をした渦が、断面でくるくる回りながらまっすぐ進みます。輪の内側は前へ、外側は後ろへ回っていて、輪全体が自分の作った流れに乗って動きます。周りとほとんど混ざらないまま数メートル先まで届き、輪の芯が細いほど速く進みます。煙や色水を使うと、その形がそのまま目に見えます。

なぜ起きるか

穴から流体をひと押し出すと、穴のふちで流れが面から離れ、速度差のできた面が丸まって輪になります。輪のどの部分も、輪の反対側が作る流れに前へ押されるので、輪はそろって進みます。混ざりにくいのは回転が内側で閉じているからで、外の空気を巻き込みにくいぶん形が保たれます。やがて縁からほどけて太りながら弱り、輪は消えます。

どこで見られるか

イルカが吐く泡の輪、びんに線香の煙をためて口を軽くたたくと出る輪、水面に落ちた一滴が水中に作る小さな輪。台所なら、水を張ったコップに食紅を一滴落とすだけで同じ形が見え、形を保ったまま数秒沈みます。人の心臓が血を送り出すときにも、似た渦ができると考えられています。

勘違いしやすいところ

空気のかたまりが飛んでいるのではありません。中身は入れ替わりながら、回っている形だけが進みます。離れた紙をゆらすほどの押しが届いても、元の空気がそのまま届いたわけではないのです。輪が崩れるのは勢いが尽きるからだけでなく、混ざりが進んで回転がほどけるからです。

解説動画(海外・英語): The Science of Vortex Rings/The Royal Institution

穴を通ると輪になる: 渦輪は、液体でも気体でも、流体が穴を通して押し出されるときにできる。押し出された流体は自分の内側へ巻き返し、トーラスと呼ばれるドーナツ形になる。煙の輪も炎の輪も水中の泡の輪も、みな渦輪。英国王立研究所のクリスマス・レクチャー用に作った巨大な砲から話は始まる。

縁との摩擦で外側が遅れる: ビニール袋で作った手製の砲で煙を撃つと、出た直後の煙は速く動く球。穴を抜けるとき球の外側は穴の縁との摩擦で遅くなり、外に出てからも部屋の空気との境目で摩擦を受ける。中心の煙のほうが速いので、外側が巻き返してキノコ雲のような形になる。

転がすほうが楽なのと同じ: 雲の後ろまで回った煙は中央の速い流れに巻き込まれ、この流れの形がやがて輪を作る。回っている流れになっていることで、煙と部屋の空気の摩擦の影響が小さくなる。床で球を滑らせるより転がすほうが楽なのと同じで、遠くまで進んでも運動エネルギーをあまり失わない。

コップも倒せる空気砲: 形を保ったまま遠くへ届くので、空気砲でプラスチックのコップを倒せるし、ろうそくも消せる。ブタンを加えれば炎の輪になる。水中でも同じで、支えの瓶に載せたペットボトルをバットで叩いて水を押し出すと、泡の輪ができる。

イルカと雨粒の渦輪: イルカやクジラはひれの動かし方で渦を作り、息を吐いて泡の輪にしている。渦輪は小さな塊の液体が静止した大きな液体の中を進むときにもでき、きっかけは2つの流体の境目にはたらく摩擦。湖に落ちる雨粒の下にも渦輪ができていて、ふだんは見えないだけ。