循環

渦と後流

翼のまわりを回る流れの強さを表す量

どんな現象?

閉じた線を一周しながら、流れがどれだけその向きに沿っていたかを足し合わせた量です。まっすぐな流れだけなら行きと帰りで打ち消してゼロですが、翼のまわりでは上面が速く下面が遅いので、一周ぶんに差が残ります。この残りが大きいほど、翼が受ける上向きの力も大きくなります。

なぜ起きるか

翼が動き出す瞬間、後ろのとがった端で流れが曲がりきれず、逆向きに回る渦がひとつ後ろへ置き去りにされます。全体の回転量は勝手に増えないので、その反対向きの回りが翼のまわりに残ります。これが循環です。循環がある状態とは、翼が空気を下へ曲げている状態の別の言い方で、下へ押した反作用として翼は上向きの力を受けます。揚力の原因というより、同じことを測る物差しです。

どこで見られるか

風洞で翼を動かした直後、後ろへ立ちのぼる始動渦。回る円筒に風を当てて推進力にする船の帆や、マグヌス効果で曲がる球も、まわりに同じ回りを持っています。翼の力を見積もる計算では、この量と速さと空気の重さをかけ合わせる形が、いまなお出発点として使われています。

勘違いしやすいところ

空気が輪になってぐるぐる回るという意味ではありません。翼のまわりの空気は一周してこないまま後ろへ流れ去ります。回っているのは、まっすぐな流れに重ねて考えたときの差のぶんだけです。またこの量が決まるのは、粘りのある実際の空気で後ろの端の条件が効くからで、粘りを無視した理屈だけでは決まりません。

解説動画(海外・英語): Thin Airfoil Theory - Kutta Condition/Postcard Professor

後縁で速さがそろう: 薄翼理論への当てはめに入る前に、講師はクッタ条件を言い直します。どんな翼型でも後縁では上面を流れる速さと下面を流れる速さが等しくなる、というのがその中身です。上面側と下面側の速さにそれぞれ名前を付け、この2つが同じ値になるという一点から議論が始まります。

循環という量の決め方: 循環は、閉じた経路を反時計回りに一周しながら、各点で速度のうち経路に沿った向きの成分を足し上げ、符号を反転させたものとして定義されます。経路をたどる向きと速度が逆を向いている辺では、その寄与が負の値として入ると講師は説明します。

渦のシートを切り出す: 扱うのは、各点に渦の強さを持たせた渦のシートです。強さには小文字のガンマという名前が付いています。そこからごく短い長さと、ごく低い高さの四角い切れ端を取り出し、その周囲を一周する経路で循環を数えます。下の辺と上の辺には流れ方向の速さが、左右の辺には高さ方向の速さが乗っています。

高さをゼロへ縮める: 高さの取り方は自由なので、限りなくゼロへ近づけた極限を取ります。すると高さ方向の辺の寄与が消え、循環は下面と上面の速さの差に長さを掛けた形だけが残ります。同じ循環はシートの渦の強さに長さを掛けたものでもあるので、渦の強さは上下面の速さの跳びに等しいと分かります。

後縁では渦の強さがゼロ: ここで最初のクッタ条件へ戻ります。後縁では上面と下面の速さが等しいのだから、その差である渦の強さはゼロでなければなりません。後縁における渦の強さがゼロ——これが、薄翼理論の言葉に翻訳したときのクッタ条件だ、と締めくくられます。