マグヌス効果

渦と後流

回転する球が横へ曲がっていく理由

どんな現象?

投げた球やボールが回転しながら進むと、まっすぐには飛ばずに横や下へそれていきます。回転の向きで曲がる向きが変わり、上から見て時計回りの球は進行方向の右へ寄ります。速さが同じなら回転が多いほど曲がりは大きく、野球の変化球では毎分2000〜3000回転ほどになります。

なぜ起きるか

空気には粘りがあるので、回る球は表面近くの空気を引きずります。片側では引きずりと風が同じ向きになって流れが表面に長くとどまり、反対側では逆向きにぶつかって早く面から離れます。その結果、後ろへ出ていく空気の帯がまるごと片側へ傾きます。帯が傾いたのは、球が空気をその向きへ押したからです。押した反作用として球は反対側へ押し返され、進路が曲がります。

どこで見られるか

サッカーの曲がるフリーキック、卓球のドライブ、テニスの強い回転。どれも回転をかけた分だけ軌道がそれます。変化球のカーブは、投手が縫い目と指で向きをそろえた結果で、打者に届くまでに20〜40センチずれることもあります。ゴルフでは意図しない横回転がそのままスライスやフックになって出ます。

勘違いしやすいところ

回る表面が空気をはじき飛ばしているのではありません。球を押しているのは表面にかかる空気の圧力で、それが偏るのは後ろへ出ていく流れが傾いたからです。いつも同じ向きに曲がるとも限らず、表面がとても滑らかな球では条件しだいで逆向きに曲がることが知られています。曲がり幅を単純な計算で当てるのは難しく、縫い目や表面の荒れで結果が変わります。

解説動画(海外・英語): Backspin Basketball Flies Off Dam/Veritasium

ダムの上から落とした球: 動画は高さ126.5メートルのダムの上からバスケットボールを落とす映像で始まる。そのまま手放した一球目は風に少し押されるだけで、落とした場所のほぼ真下に着く。ところが二球目をバックスピンをかけて放すと、投げてもいないのに大きく飛び出していく。落とした本人もこうなるとは思わなかったと話す。

片側だけ流れが離れる: 回転しながら空気の中を進む球や円柱のすべてに起きるのがマグヌス効果だと説明する。球が速さを得ると、片側では回転の向きと空気の向きがそろい、空気は表面に引きずられて後ろへ曲げられる。反対側は向きが逆にぶつかるので、曲げられないまま剥離して球から離れていく。

押した分がそのまま返る: 流れがまるごと片側へ傾くので、球は空気を片側へ押したことになる。押された空気は同じ大きさの力を反対向きに球へ返し、そのぶん進路が曲がる。名は1852年にこれを書き残した人物に由来するが、テニスの球の飛び方としてニュートンが二百年ほど先に記していた、と付け加える。

帆の代わりに回す円柱: 効くのはテニスやサッカーやゴルフだけではない、と話は外へ広がる。動画は煙突に見える回転する円柱を帆の代わりに立てた船を見せ、横風を曲げて前へ進む力に変えていると述べる。円柱を翼の代わりにした飛行機はふつうの翼より大きな揚力を出したが、抗力もはるかに大きく、一度飛んだきり墜落した。

近ごろ戻ってきた使い道: それでも近年また使われはじめている、と動画は結ぶ。回る円柱だけで浮く実験機が飛んでおり、4本の回転する円柱を立てて燃やす軽油を減らす船も走っている。バスケットボールが曲がる話だけでは終わらず、大きな乗り物を動かす力としても見直されている、というのが締めになる。