蒸らし・注ぐ速さ・回数の決め方。
ハンドドリップで手が決めるのは、蒸らし・注ぐ速さ・注ぐ回数・終わらせ方の4つです。先に粉と湯の量と全体の時間を固定しておくと、4つのうち変えたものと味の変化を結びつけられます。基準はハンドドリップの項目にある粉20gに湯300g・全体で2分30秒〜3分で、0.1g単位のスケールとタイマーがあれば毎回同じ条件で淹れられます。
最初の1投は蒸らしにあて、粉全体が湿る量の湯を注いで30秒ほど待ちます。焙煎でできた二酸化炭素は豆の中に残り、挽いたときと湯に触れたときにまとめて出て、抽出の進み方に関わります(チューリッヒ応用科学大学)。豆に残る二酸化炭素の量は焙煎度と結びつき、焙煎が深いほど抜ける速さが増しました(ゲルフ大学)。挽いた粉からの抜け方は、焙煎度より挽き目と焙煎の温度に大きく左右されました(同)。膨らみ方は豆の状態の目安にとどめ、蒸らしの時間は毎回そろえます。
蒸らしのあとの注ぎは、湯の柱で粉を動かす操作でもあります。ガラスの漏斗に透明な粒を入れ、湯の当たり方をレーザーと高速度カメラで追った実験では、湯の柱が当たった所から粒が雪崩のように崩れて回り込み、湯と混ざりました(ペンシルベニア大学)。注ぐ高さと流量を変えれば、豆を増やさずに濃さと味を動かせます(同)。湯の柱が途中で切れて滴になると粉がよく混ざらないため、細口ケトルの太めの湯の柱がつながる範囲で、なるべく高い位置から注ぐのが研究チームの勧めです(米国物理学協会の発表)。勢いよく注ぐほど成分は出やすく、弱く注ぐほど出にくくなります(Kenken Coffee)。
注ぐ回数は、狙う味で決めます。甘みとコクを出したい深めの豆は、粉の膨らみを崩さないよう30gずつ、中心から500円玉ほどの円の中に注ぎ、粉の面が沈み切る前に次を重ねます(暮らしと珈琲)。高い位置から勢いよく注いで粉を大きく動かす淹れ方は、酸味と香りを立てたい浅い豆に向きます(同)。回数を細かく分けるほど1回ごとの湯量と間隔で調整でき、細く注ぎ続けるほど毎回の差が出にくくなります(注ぎ方と湯の落とし方)。
終わらせ方も味を決めます。抽出の終わりに出てくるのは渋みと苦みで、最後まで落とし切るとその割合が上がります(暮らしと珈琲、Kenken Coffee)。目標より多めに湯を注ぎ、サーバーに目標の量がたまった時点でドリッパーを外す「途中止め」なら、終わりの成分を入れずに済みます(暮らしと珈琲)。濃く感じたら、ドリップに使った湯を10〜50mlの範囲で足すと、その日の仕上がりを後から合わせられます(同)。
やりがちなのは、ペーパーフィルターの壁に直接湯をかけ、粉を通らずに落ちる湯を作ることです(同)。湯が速く抜けすぎる・遅すぎるときは、注ぎ方を変える前に挽き目の段階を見直し、変える数字は1回に1つに絞ります。
出典
- 動画 暮らしと珈琲の動画(岡山と東京の焙煎所。SCAJ の舞台での実演で、自店の豆を売る利害がある) 【同じ豆なのにこんなに変わる】簡単でおいしいハンドドリップ公開飲み比べ
- 論文・英語 Park E, Young M, Mathijssen AJTM(ペンシルベニア大学 物理天文学科)(2025) Pour-over coffee: Mixing by a water jet impinging on a granular bed with avalanche dynamics
- 資料・英語 AIP Publishing(米国物理学協会の出版部門。上の論文の発表)(2025) Coffee Too Weak? Try This!
- 論文・英語 Smrke S, Wellinger M, Suzuki T, Balsiger F, Opitz SEW, Yeretzian C(チューリッヒ応用科学大学 Coffee Excellence Center)(2018) Time-Resolved Gravimetric Method To Assess Degassing of Roasted Coffee
- 論文・英語 Wang X, Lim LT(ゲルフ大学)(2014) Effect of roasting conditions on carbon dioxide degassing behavior in coffee
- 動画 Kenken Coffee 【おすすめレシピ】その浅煎り甘いですか?浅煎りコーヒーを甘くする入れ方【調整方法】







