厨子
堂内で見るもの
時代: 時代を通じて
仏像や経巻を納める、屋根と扉を備えた箱形の造作です。組物まで小さく作り込むため、堂そのものの様式が縮んだ形で読める場合があります。
どんな建物・部材か
本尊や経巻を納める箱形の造作で、屋根も組物も扉も備えた小さな建物として作られます。そのため厨子を見れば、堂で使われた細部の手法が縮んだ形で確かめられます。奈良県の法隆寺に伝わる玉虫厨子は高さ約2.3メートルで、錣屋根を載せた宮殿部を持ち、飛鳥の建築の姿を伝える資料として扱われます。ただしこちらは建造物ではなく工芸品として国宝に指定され、大宝蔵院に納められています。
見分けの決め手
屋根の形と組物を、堂の細部と見比べます。厨子は縮んだ建物なので、粽や詰組がそろえば禅宗様、蟇股や間斗束が並べば和様の手法にあたります。扉は板扉と桟唐戸に分かれ、桟唐戸なら禅宗様の系統と見ます。屋根も入母屋造や宝形など建物と同じ形が選ばれ、堂の建立年と厨子の年代は一致しないことが多く、指定説明でそれぞれの年代を確かめます。
どの様式に属するか
様式は堂に従わず、厨子ごとに決まります。奈良県の法隆寺の玉虫厨子は飛鳥の手法を伝え、中世の堂に置かれた厨子には禅宗様の細部が入ります。国指定文化財等データベースでは、建物の指定名称に「附 厨子」と添えて建物と一緒に守る例があり、附の欄に書かれた基数と年代が手掛かりになります。工芸品として単独で指定された厨子は、建造物の側の記載には現れないので、探す先が変わります。
取り違えやすい相手
真宗の本堂で使う宮殿と、工芸品として指定される厨子が相手です。置かれる場所と、指定の種別を見ます。宮殿は内陣の中央に据える建物形の造作で、富山県の勝興寺本堂のように内陣の飾りと一体になる構えを取ります。呼び名が「くうでん」と読み替わる点も別です。岐阜県の安国寺経蔵に納まる輪蔵は、回る書架であって仏を納める箱ではありません。
どこに立つと見えるか
格子ごしに、壇の上へ載る小さな屋根の輪郭を探します。堂の中は暗く、金箔と漆は光の向きによっては沈むため、扉が開く時間の光の差し方で見え方が変わります。奈良県の法隆寺では玉虫厨子が大宝蔵院に移されており、堂ではなく展示の場で見ることになります。屋内で写真を撮らない約束は収蔵の施設でも同じで、堂に残る厨子は内陣と外陣の境ごしに輪郭だけを追うことになります。