雁木
町並みの構え
主屋の前に庇を張り出して作る、雪の日の通り道です。家ごとに架けた庇が隣どうしつながり、通りの片側に屋根のある道ができます。
どんな形か
主屋の正面から道の側へ庇を張り出し、その下を通路にしたものです。庇は柱と腕木で受け、人が立って歩ける高さを確保します。一軒ぶんの長さは間口と同じで、それが隣家から隣家へ連なることで通りの片側に屋根のかかった道ができます。天井は二階の床裏や小屋組がそのまま見えることが多く、仕上げは家ごとにばらつきます。青森県黒石市中町では、この構えが道の両側に続きます。
なぜその形になったか
積もった雪の上でも、店の前を歩き通せるようにするためです。雪の多い町では道が埋まり、荷も客も動けなくなります。各戸が自分の敷地の側に庇を出し、それを軒づたいにそろえると、除雪を待たずに町の端から端まで屋根の下を歩けます。公共の道路の上へ一体に架けた構造物ではなく、家ごとの庇が結果として連なったものである点が、後の時代の通路と違うところです。
見分けの決め手
柱の並びが家ごとに切れているかを見ます。一軒ずつ架けたものが続くため、柱の間隔も庇の高さも隣で少しずつずれ、継ぎ目に段が付きます。雨樋の落ち口も家ごとに分かれ、通しで一本になっている部材がありません。新潟県の保阪家住宅主屋のように、主屋の解説に雁木の記載が含まれる建物もあり、建物側の記録から通路の古さをたどれます。足元も家ごとに石や板で仕上げが変わり、一続きの床として設計されていないことが読み取れます。
取り違えやすい相手
商店街のアーケードが相手です。道路の上へまとめて架けた構造物がアーケードで、柱の間隔も屋根の高さも通り全体でそろい、一つの計画で一度に作られます。雁木は私有地に架けた庇の連なりなので、家が建て替わると途中で高さも仕上げも変わります。黒石市は「同じものが、新潟県などでは『雁木』と呼ばれており、地方によって呼び名が違います」と書いており、呼び名は地方で分かれたままです。
どのあたりで見られるか
雪の多い日本海側の町に残ります。青森県黒石市中町は重要伝統的建造物群保存地区で、種別は商家町、選定は平成17年です。黒石市は「建物の表通りに設けられたひさしを、青森県や秋田県では『こみせ』と呼んでいます」と書いており、同じ構えが県境で名を変えます。新潟県の旧酢屋呉服店店舗兼主屋のように、個々の建物の解説に雁木が出る例もあります。