土蔵造の町家
町並みの構え
柱を土で塗り込め、外から見える木を無くした町家です。大火のあとに防火のねらいで建てられ、通りに面した店をそのまま蔵の造りで包みます。
どんな形か
柱も貫も土の中に隠し、壁の面だけが外へ現れる大壁の町家です。壁は柱の外側にさらに土を重ねるぶん厚くなり、窓と出入口は分厚い扉で塞げるように作ります。軒下には水平の鉢巻が回り、屋根は瓦で葺いて桟瓦葺とする例が多く見られます。開口の脇には観音開きの土扉が付き、平時は開いたまま壁へ添わせます。俗称の「蔵造り」で呼ばれることが多く、町の解説でもこの言い方が使われます。
なぜその形になったか
大火のあとに、町ぐるみで焼けない造りへ建て替えたためです。木を見せる造りでは軒や柱に火が付きますが、土で包めば火の粉が当たっても燃える面がありません。埼玉県川越市では明治二十六年の大火で市街の大半が焼けました。焼け残った大沢家住宅は寛政4年の店蔵で、これに倣って同じ造りの店が並んだと説明されます。一軒だけでは効かず、隣が同じ造りになって初めて町として効くため、通りごと表情が変わりました。
見分けの決め手
通りに面した一階が、店として開いているかが決め手です。土蔵造の町家は正面に大きな開口を取り、昼は戸を引き込んで商いの間を見せます。壁を見て柱の縦線が一本も出ていなければ大壁で、海鼠壁や漆喰の平塗りで仕上げます。二階には虫籠窓のような塗り込めの小窓が並びます。富山県高岡市山町筋では、通りに沿って同じ造りの店が続きます。正面だけを土で塗り、側面は板張りのままの家もあるので、角へ回って壁の続きを見ます。
取り違えやすい相手
柱を見せる真壁の町家と、蔵そのものが相手です。壁から柱の縦線が出ていれば真壁で、京都府や奈良県の町家に多い仕上げです。蔵は窓が小さく、通りへ向けて商いの口を開きません。同じ大壁でも、一階に格子や大戸が並ぶなら店、扉一つで閉じるなら蔵の側です。千葉県香取市佐原の川沿いには、蔵と店が隣り合って建つ区画が残ります。同じ通りに真壁と大壁が交互に並ぶ町もあり、一軒ずつ壁の面を見比べます。
どのあたりで見られるか
火事を経験した商いの町に残ります。埼玉県川越市川越、富山県高岡市山町筋、千葉県香取市佐原はいずれも重要伝統的建造物群保存地区で、通りに沿って店が並ぶ町として選定されています。富山県の菅野家住宅のように、一棟ごとに重要文化財となっている建物もあります。向かいの歩道に立ち、軒の高さと壁の厚みを横から見ると、木の見えない面がつかめます。