星雲は写真のように赤く見える

写真との落差

暗い場所の目は、色を見分ける細胞がほとんど休んでいます。写真の赤は水素の輝線を積み上げた色で、同じ光を目で受けても灰色から淡く緑がかったしみにとどまります。

言われていること

公開画像や写真集に載る星雲は、赤やピンクの雲が渦を巻き、内側の青い光まで写っています。干潟星雲や三裂星雲の名を星図でたどり、空の暗い場所へ出て双眼鏡を向ければ、あの色が薄いなりに出てくるという受け取り方が行き渡っています。作例が数分から数十分の露光を前提に組まれていることは写真の脇に小さく添えられるだけで、肉眼で見た人の記録より印刷された色のほうが先に共有されます。

目には実際どう見えるか

暗所視に入った目は、色を見分ける錐体細胞がほとんど働かない状態です。理科年表の星団星雲表で4等台に位置するオリオン大星雲は、街を離れた空なら肉眼でも位置が分かりますが、映るのは灰色から淡く緑がかったしみで、赤は出てきません。いちばん濃い中心部でようやく緑みを感じる人がいる程度で、双眼鏡で増えるのは面積と芯の濃さにとどまります。

どこから広まったか

写真の赤は、水素の輝線Hα、波長656ナノメートルが写ることで出ます。日本天文学会「天文学辞典」は、近くの星の光で電離したガスが自ら光る天体を輝線星雲として分けています。暗順応の進んだ目は感度が青緑の側へ寄るため、この波長はとりわけ感じにくい端にあたります。公開画像では波長ごとの写りに色を割り当てて重ねることもあり、目に届く色とは別の組み立てになっています。

何なら本当か

写っている赤が実在する光である点は本当です。ガスの出す輝線はそこにあり、露光を重ねれば色として積み上がります。届いていないのは光ではなく色を判定するしくみのほうで、そらし目に切り替えれば形と広がりは追えます。星は写真のように色とりどりに見えるが明るい星なら色の出る側であるのに対し、こちらは淡い面の光では色が出ない側で、空の条件を選んでも変わりません。