大接近なら火星は大きく見える
天文の言い回し
大接近でも、火星は肉眼では点のままです。見かけの直径は最大でも24秒角ほどで、目が二つの点を分けられる限界のおよそ1分角に届きません。
言われていること
「大接近」という言葉が並ぶと、空に赤い円盤が浮かぶ姿が想像されます。距離が半分近くまで縮むのは事実で、見かけの大きさが倍ほどになるとも伝えられるため、肉眼で形が分かるようになるという受け取り方につながります。実際に火星を見つけてもほかの一等星と同じ点のままなので、明るい星を順に見比べて探し直すことになります。「地球に最接近」という見出しも同時に並ぶため、距離の話と見え方の話が一つに束ねられます。
目には実際どう見えるか
国立天文台「火星の接近」によれば、大接近では5,759万キロメートル(2018年)まで近づいて視直径が24秒角を超え、小接近では9,608万キロメートル(2025年)で14.6秒角にとどまります。どちらも肉眼の分解能であるおよそ1分角に届きません。目に増えるのは明るさと赤みで、双眼鏡でも点が明るくなるだけで円盤の形にはなりません。
どこから広まったか
大接近と小接近という区別そのものは天文の言い方です。火星の軌道がゆがんでいるため、およそ2年2か月ごとに巡ってくる接近でも距離が毎回違い、特に近い回が15年から17年おきに来ます。倍になるのは惑星の衝の頃の視直径であって、肉眼に映る姿ではありません。距離の比が、そのまま見え方の比として伝わるところで話がずれ、同じ大接近でも回ごとに距離が違うことまでは残りませんでした。
何なら本当か
接近のたびに明るさが増すことは本当です。近い回には木星と競うほどになり、赤い色みは街の空からも分かります。日ごとに星々の間を動く点も惑星の側の目印になり、そこは肉眼で追えます。ただし視直径が1分角に届かない以上、形は肉眼でも双眼鏡でも点のままで、いつ近づくかという話と、どう見えるかという話は分けて読む必要があり、接近の回を選ぶ意味は大きさではなく明るさと見つけやすさの側にあります。