そらし目

目のはたらき

淡い星雲は、正面から見つめるほど消えます。中心窩には桿体がほとんど無く、光を拾う細胞は視野の少し外側に多いためで、視線をずらしたまま注意だけを対象に置くと浮かび上がります。

何を表す数字か

視線の中心から何度ずらすか、という角度の技法です。網膜のうち暗さに強い桿体は中心窩にほとんど無く、Curcio ら 1990 の実測では中心のおよそ0.35mm、視角にして約1.25度が桿体を持たない領域でした。正面で見るとは、いちばん感度の低い場所へ像を置くことにあたります。そらし目は視線だけを横へ外し、注意は対象へ置いたままにする見方で、別のものを眺めることではありません。

実際の値の目安

ずらす角度の目安は8〜20度です。Curcio ら 1990 では桿体の数が視野の中心から18〜20度離れた輪の上で最大になり、1平方ミリあたり15万本前後に達します。腕を伸ばしたこぶしの幅がおよそ10度なので、対象の横にこぶしを一つ置く感覚が近い値です。視野の外側15度あたりには盲点があり、そこへ像が乗ると淡いものは消えます。ずらす向きを変えて試すのはこのためです。

これが動くと何が変わるか

同じ夜、同じ空でも見える下限が動きます。淡い銀河や星雲は、正面では白い斑点が一瞬よぎるだけですが、視線を外すと輪郭がにじんで広がり、大きさと向きが分かるようになります。効きが大きいのは表面輝度の低い相手で、明るい恒星や惑星ではほとんど変わりません。視線を戻した瞬間に対象が消えるため、見えた形を紙に描き写す手はたびたび止まります。

自分で確かめる方法

さんかく座銀河やアレイ星雲のような、空が暗ければ双眼鏡で届く淡い相手を選びます。まず正面に置いて十秒数え、次に視野の端へ寄せて同じだけ数え、見えた形を比べます。対象を視野の中で上下左右に動かし、いちばん見えやすい向きを探すと、自分に効く角度が分かります。街明かりの下や月のある夜は差が出にくく、比べる材料になりません。