尾流雲
飾りと付属雲
高さ: 決まった高さを持たない
降っているのに、地面には届かない雨です。雲底から落ちた粒が途中の乾いた層で蒸発しきり、尾を引く筋だけが空に残ります。
どう見えるか
雲の底から下へ、斜めか垂直に伸びる灰色の筋が垂れ、その下端が途中でほどけるように消えます。WMO 国際雲図帳は尾流雲を「雲の下面に付いた、地表に届かない降水の筋」と定義しており、見えているのは落下中の雨の粒や氷の粒そのものです。筋は落ちる間に風で流されて弓なりに反ることが多く、色は雲より濃い灰色から白まで幅があります。
どこにできるか(高さ・どの雲に付くか)
WMO 国際雲図帳は、尾流雲が付く雲として巻積雲・高積雲・高層雲・乱層雲・層積雲・積雲・積乱雲の7種を挙げています。粒を落とせる雲であれば棚を問わず付くため、この項目には決まった高さがありません。気象庁『気象観測の手引き』の出現高度でいえば、5〜13kmの巻積雲から地面付近の積雲まで、対流圏のどこにでも現れます。
なぜその形になるか
落ちる粒は雲の外にある乾いた空気の中を通り抜けます。水滴なら表面から蒸発し、雪のような氷の粒なら昇華して、下るほど小さくなります。粒が地面に届く前に消え尽きれば、その高さで筋がぷつりと途切れます。落下の途中で高さごとの風速の違いにさらされるため、筋は下ほど後ろへずれ、鉤のように曲がった尾になります。
似た雲との分け方
分かれ目は筋の下端が地面に届いているかどうか、この一点です。届いていれば降水雲(praecipitatio)という別の副変種になり、WMO はそちらを「雲から降って地表に達する降水」と定義しています。遠くの雨を横から見るときは、筋の下端と地面の間に隙間があるかを稜線や建物で確かめます。穴あき雲の穴の中心から垂れる筋も、この尾流雲です。
この雲が出ている空で起きていること
雲の中では粒が育ち、雲の下では蒸発が勝つ——空はこの二層に分かれた状態にあります。蒸発は周りから熱を奪うので、筋の下の空気は冷えて重くなり、下降流の元になります。積乱雲の下に濃い尾流雲が下りているとき、その冷気は地表へ達してガストフロントを作ることがあり、気象庁はこれを「積雲や積乱雲から吹き出した冷気の先端」と定義しています。