壁雲
飾りと付属雲
高さ: 下層(地表〜2km)
雲底の一部が、局所的に下へ張り出した壁です。ラテン名 murus で、WMO 国際雲図帳2017年版から副変種として加わりました。
どう見えるか
WMO 国際雲図帳2017年版の定義は「積乱雲の雲底から局所的に、持続して、しばしば急に下がった部分で、そこから漏斗雲が生じることがある」です。雲底の面から四角い塊が一段だけ下りたように見え、輪郭がはっきりしていて、その場に居座ります。塊の全体がゆっくり回っているように見えることもあります。
どこにできるか(高さ・どの雲に付くか)
下がるのは積乱雲の雲底だけで、探す場所は雨の降っていない側です。WMO は強い上昇域の下、降水のない部分にできるとしているので、雨の柱を背にして立つと反対側の雲底が候補になります。漏斗雲は多くがこの壁の下面から下りるので、空を探す順としては壁のほうが先に来ます。高さは雲底そのものなので、地表から2kmまでの下層に収まります。
なぜその形になるか
積乱雲へ吸い込まれる空気は、雨で冷やされて湿った空気を巻き込みます。湿った空気はより低い高さで露点に達するので、そこだけ雲底が下がって壁になります。気象庁『気象観測の手引き』は積乱雲の中の上昇気流を毎秒1〜10m、局部的には数十mにも達するとしており、murus はこの上昇の柱の足元にあたります。
似た雲との分け方
アーチ雲とは位置で分かれます。あちらは雲の前面に横たわる弧で、murus は雲底の面から下へ張り出した塊です。ちぎれて流れる断片雲とも違い、こちらは同じ場所に留まって形を保ちます。雨の柱が暗く下がって見えるものとも別物で、murus は雨を伴わない側の雲底に現れます。乳房雲のこぶとも別で、あちらは丸い袋がいくつも並び、murus は一段の壁が一か所だけ下がった形です。
この雲が出ている空で起きていること
積乱雲の上昇流が、一か所へ集まっている状態です。WMO はスーパーセルや激しいマルチセルに伴うとしており、murus が回転を強めると漏斗雲が生じることがあります。気象庁は竜巻を「積雲や積乱雲に伴って発生する鉛直軸を持つ激しい渦巻」と定義しています。行動をどうするかは、気象庁の竜巻注意情報や警報の発表を見て決めます。