乳房雲
飾りと付属雲
高さ: 決まった高さを持たない
雲の底から丸いこぶが垂れ下がって見える形の名です。WMO 国際雲図帳の定義は「雲の下面にある、乳房のような垂れ下がった突起」で、成因はいまも定まっていません。
どう見えるか
平らなはずの雲底に、丸いこぶがいくつも下向きに並びます。WMO 国際雲図帳の定義は「雲の下面にある、乳房のような垂れ下がった突起」で、表面が滑らかで、一つ一つの輪郭がはっきりしているのがふつうです。低い太陽の光が横から当たると陰影が濃くなり、丸みの並びが浮かび上がります。太陽の高い真昼には同じ雲底が一様な灰色に沈んで見え、こぶの並びは朝夕の低い光のほうがつかみやすくなります。
どこにできるか(高さ・どの雲に付くか)
WMO 国際雲図帳が挙げる付き先は巻雲・巻積雲・高積雲・高層雲・層積雲・積乱雲の六つです。Schultzら 2006 は、最も多く観測されるのが積乱雲のかなとこの下側で、ほかに飛行機雲や火山灰の雲でも見られると整理しています。高さは付く雲しだいで、上層から中層までの幅があります。
なぜその形になるか
雲の底で空気が下へ動いていることが共通の見立てです。Schultzら 2006 は、かなとこの沈降、雲底の下での蒸発と昇華、融解、降水粒子の落下、雲底からの巻き込みによる不安定、放射、重力波、ケルビン・ヘルムホルツ不安定、レイリー・テイラー不安定、レイリー・ベナール型の対流という十の仮説を並べ、規模が小さく続く時間も短いため、検証に足る観測が無いと書いています。
似た雲との分け方
同じ雲底から下へ伸びる尾流雲とは、形の締まり方で分かれます。尾流雲は筋として斜めに流れ、こちらは丸い袋として区切られます。Schultzら 2006 も、この二つとつらら状の雲との違いを論点の一つに挙げています。雲底の面ごと一段下がる壁雲とも別で、乳房雲は雲底の高さはそのままに、こぶだけが袋状に垂れます。かなとこ雲の下側に並んでいれば、まずこちらを疑う形です。
この雲が出ている空で起きていること
かなとこの下側に並ぶときは、その積乱雲が上層まで達し、氷の粒を横へ広げ終えた後の空です。荒々しい空と結びつけて語られてきた形ですが、Schultzら 2006 が整理したとおり仮説が並んだままで、どれが効いているかは決まっていません。この図鑑では、見えている形と、その下で空気が沈んでいるらしいことまでを書きます。