在庫と売上原価

所得と経費

売れ残りは経費にならないという原価の考え方

どういうもの?

仕入れた商品の代金は、買った時点ではなく売れた時点で経費になります。年末に残った在庫は経費にならず、資産として翌年へ持ち越します。この計算が売上原価で、期首の在庫と仕入れを足し、そこから期末の在庫を引いて求めます。仕入れた分を全部落とすのは誤りで、利益が実際より小さく出てしまいます。

自分に関係ある?

中古品の転売やハンドメイド販売のように、モノを仕入れて売る副業なら必ず関わります。材料を先にまとめ買いする手づくり系も、考え方は同じです。役務だけを売る仕事には在庫が存在しないので、この計算そのものが出てきません。売上が小さくても、在庫があるなら数える必要はあります。

何をすればいいか

年末に一度、売れ残りを数えて金額を出します。数と単価を書いた在庫表を作り、仕入れ値で評価するのが基本です。仕入れの記録は納品書や注文履歴で残し、会計ソフトでの記帳に商品ごとに入れておくと、期末の集計は数字を拾うだけの作業になります。数えた日付と数量を残すことも忘れずに。

つまずくところ

売れない在庫を抱えるほど税の負担が重く感じる構造が、この仕組みのつらいところです。現金は先に出ているのに経費にならないので、利益は出ているのに手元にお金がないという状態が起きます。仕入れを増やして節税、という発想は逆に効くことがあり、無在庫転売へ流れる人もいますが、そちらはそちらで別の問題を抱えます。

確認先

棚卸資産の評価と売上原価の計算方法は、所得税法と国税庁の確定申告の手引きに書かれていて、評価方法には届出が必要なものもあります。仕入れの多い副業を始めるなら、最初の年に所轄の税務署で確認しておくと安全です。執筆時点の扱いで、改正されることがあります。

解説動画: 【日商簿記3級】 第21回 『決算整理仕訳③』売上原価の算定 しい・くり・くり・しい/【簿記・会計】公認会計士たぬ吉の資格塾

売上原価は売れた分だけ: 売上原価とは当期に販売した商品の仕入原価のこと。みかんで説明する。1個80円で仕入れて100円で売れば、売上100・売上原価80・売上総利益20。ところが2個仕入れて1個しか売れなかった年に何もしないと、仕入の160がそのまま売上原価に並び、売上総利益がマイナス60という姿になってしまう。

売れ残りを資産に振り替える: 売れ残った1個分の80円は手元にあり、金銭価値で評価できる資産。そこで決算で繰越商品80/仕入80と振り替え、仕入から在庫分を減らす。売上原価は160-80で80、売上総利益は20に直る。期中の仕訳には売上と仕入しか出てこず、繰越商品はこの決算整理で初めて登場する勘定だと補足がある。

期首の在庫は逆向きに動く: 期首に在庫があった年は向きが逆になる。前期末の80円が繰越商品として借方に残っているので、期首に残っている商品はまず全部仕入へ振り替える。3個売れた例では当期仕入160に期首80を足して売上原価240、売上300に対して売上総利益60。仕入れた分ではなく売った分、という定義に戻れば両方向とも説明がつく。

しいくりくりしいの式: この2本の仕訳をまとめて「しい・くり・くり・しい」と呼ぶ。式にすると期首商品+当期仕入高−期末商品=売上原価。期首10円・当期仕入100円・期末50円なら売上原価は60。動画は、語呂で機械的に切る人と意味を理解している人では雲泥の差があると言い、丸暗記のまま進まないよう釘を刺す。

売上原価勘定を使う型: 仕入勘定ではなく売上原価という勘定を新たに設けて計算するパターンもある。期首300・当期仕入8,000・期末500のとき、仕入勘定で解けば残高は7,800円。売上原価勘定を使う型では期首と仕入をいったんそこへ集めて8,300円とし、期末の500だけを繰越商品へ戻す。違いは期首商品も当期仕入も売上原価勘定へ振り替える点で、動画は見慣れない勘定名が出てくるので少し注意と締める。