スポロトリコーシス

毛とトゲ

治りかけの傷が、また盛り上がります。土の中の真菌がトゲの刺し傷から入り、数週間かけて赤い結節が腕の内側へ並ぶ深在性の感染です。

どんなことが起きるか

刺し傷が治らないまま、数週間かけて赤いしこりが増えていきます。最初に刺した場所が固く盛り上がり、そこから腕の内側へ数珠つなぎに結節が並ぶのが典型で、皮膚のリンパ管に沿って上へ進みます。熱は出ず、痛みも強くないため虫刺されや化膿と間違えられ、抗菌薬を使っても引かないことで気づかれます。結節は中央が崩れて潰瘍になり、自然には治りにくい経過をとります。

原因になる植物

原因は植物の成分ではなく、土やミズゴケにいる Sporothrix 属の真菌です。トゲや木片が皮膚を破ったところから入るため、バラの手入れ、ミズゴケを使う鉢替え、竹のささくれ、わらや腐った木を扱う場面です。園芸では「バラ病」と呼ばれることがありますが、正式な病名はスポロトリコーシスで、バラだけの病気ではありません。日本皮膚科学会『皮膚真菌診療ガイドライン2025』は、深在性皮膚真菌症の一つとして扱っています。

その場でどうするか

この病気は刺した直後には分かりません。その場でできるのは刺し傷の手当てで、トゲを残さず抜き、流水と石けんで洗うところまでです。市販の軟膏を塗って様子を見る日数が、そのまま診断の遅れになります。いつ、何で刺したかを控えておくと、あとの受診で役に立ちます。抜けないトゲが残ったときは折れて残るトゲの手順に移り、傷が閉じたのに盛り上がるようなら日数を数え始めます。

受診の目安

刺し傷が2〜3週間たっても閉じない、同じ腕に硬いしこりが増えるなら皮膚科にかかります。見た目だけでは決まらないため、病変から採った材料の真菌培養で菌を確かめます。受診のときに刺した日と、刺した物(土・トゲ・ミズゴケ)を伝えると、培養に回す判断が早くなります。抗菌薬で改善しない皮膚のしこりは、この病気を含めて考える対象で、治療は内服が中心の長い通院になります。

起こさないために

傷のある手で土に触れないことが要です。ミズゴケや腐葉土を扱うときはニトリル手袋を着け、手のひらを貫くトゲに備えて厚手の作業手袋を重ねます。前腕はアームカバーで覆い、袖口から土が入らないようにします。作業の終わりに手と前腕を石けんで洗うまでを一組にします。園芸と農作業が入口になる感染で、土とトゲがそろう場面では今も起こります。