PFCバランス
食事の基本
三大栄養素の配分を決める
役割
たんぱく質・脂質・炭水化物が総カロリーのどれだけを占めるかという配分のことです。同じカロリーでも配分しだいで筋肉の残り方や満腹感、トレーニング中の力の出方が変わるため、体重の増減とあわせて最初に決めておく土台になります。
摂り方
筋トレをする人の出発点はたんぱく質を体重1kgあたり1.6〜2.2g、脂質は総カロリーの20〜30%、残りを炭水化物です。たんぱく質と脂質を先に確保し、増量と減量の調整は炭水化物で行うと、日々の管理がぐっと簡単になります。
注意
脂質を極端に削るとホルモンの分泌や脂溶性ビタミンの吸収に影響します。最低でも体重1kgあたり0.6〜0.8gは残してください。数字合わせにこだわりすぎて食事が苦痛になるくらいなら、総カロリーとたんぱく質だけを見るほうが続きます。
解説動画: PFCバランスの決め方と1日に食べる量の計算/Marina Takewaki
概要: 何をどれだけ食べればいいのかを、自分の数字を出すところまで解説する回。痩せるかどうかはカロリー・内容・量の三つのバランスで決まる。同じ1500kcalでも中身が鶏胸肉だけならバランスは悪い。糖質や脂質を抜くのではなく、整えることが結局いちばん痩せるという立場である。
まず自分のカロリーを出す: 消費カロリーは、生きているだけで使う基礎代謝が全体の約60%、運動と日常の動作による活動代謝、食事の消化で使うDITが約10%で構成される。基礎代謝は性別・年齢・身長・体重から計算でき、それに活動量を掛けると1日の消費カロリーが出る。摂取の下限は基礎代謝の1.1倍で、それより減らす食事は危険。実際の目標値はこの下限と消費カロリーの中間あたりに置く。
黄金比は2対3対5: タンパク質・脂質・炭水化物のカロリー比は2対3対5が目安で、「ふみこ」と覚える。厚生労働省の指標でも脂質は20〜30%、炭水化物は50〜65%とされており、炭水化物は思っているより多く摂ってよい。ただし脂質だけは1gあたり9kcalと他の二つの倍あるため、意識しなくてもカロリーが超えやすいのは脂質になる。
グラムに直す: 目標カロリーに割合を掛け、タンパク質と炭水化物は4、脂質は9で割ればグラムが出る。1日1500kcalならタンパク質75g・脂質50g・炭水化物188g。これを3で割って1食あたりタンパク質25g・脂質16g・炭水化物63gという数字を覚えておくと、コンビニの表示を見て選べるようになる。1日で収まればよいので、間食する日は食事の脂質を減らして帳尻を合わせてもよい。
ビタミン・ミネラルと手ばかり: 三大栄養素だけ整えても肌が荒れる、生理が止まるといった不調が出る。体の調子を整えるビタミンとミネラルも必須で、目安は野菜1日350g(緑黄色野菜120g・淡色野菜230g)と果物200g。計算が面倒なら手を使う「手ばかり」でよく、主食はグーひとつ分、主菜は手のひら1枚分、副菜は生野菜で両手いっぱい(加熱するなら片手)。主食・主菜・副菜を一つずつそろえるだけでもバランスは取れる。
解説動画(海外・英語): What Are Macronutrients? | Macros Explained/Adam Explains
PFCの正体と、1グラムあたりのカロリー: マクロ栄養素とは、食事の中で大量に必要になる栄養素のこと。人間に必要なマクロ栄養素は炭水化物・たんぱく質・脂質の3つで、PFCバランスという言葉の中身はこの3つの配分にほかならない。エネルギーはそれぞれカロリーの形で供給され、おおよそ1グラムあたり炭水化物が4キロカロリー、たんぱく質が4キロカロリー、脂質が9キロカロリーになる。脂質だけが2倍以上のエネルギー密度を持つので、同じグラム数でもカロリーの効き方がまったく違う。食べた量を計算に落とすときは、この3つの数字が土台になる。
炭水化物は糖のつながり方で呼び名が変わる: 炭水化物は炭素・水素・酸素からできていて、水素と酸素の比率が水と同じ2対1である(例外もある)。炭素の水和物という名前はここから来ている。動画はこの性質を、ケトジェニックのような低炭水化物食で最初の数週間に水分ぶんの体重が大きく落ちる説明として持ち出している(ただしこれは動画独自の説明で、初期に水が抜ける理由としては、筋肉と肝臓に蓄えたグリコーゲンが水を抱えていることが一般には挙げられる)。炭水化物はサッカライドと同義で、セルロース(食物繊維)、砂糖、でんぷんを含む。サッカライドは単糖・二糖・オリゴ糖・多糖の4つに分かれ、単糖と二糖はふつう糖と呼ばれ、グルコースのように名前が「オース」で終わるので見分けやすい。オリゴ糖は単糖が3から10個、多糖は10個を超えるつながりで、筋肉と肝臓に蓄えられるグリコーゲンは多糖にあたる。
たんぱく質は毎日作り替えられている: たんぱく質はアミノ酸が長くつながった巨大な分子で、少なくとも1本の長いポリペプチド(アミノ酸残基が一直線に並んだ鎖)でできている。残基が20から30個に満たない短い鎖はペプチドやオリゴペプチドと呼ばれ、たんぱく質とは区別される。できたたんぱく質の寿命は数分から数年まで幅があるが、ヒトの細胞の中では多くが1から2日で分解され、作り替えられていく。これがたんぱく質のターンオーバーである。多くのたんぱく質は酵素として体内の化学反応を進めるので、代謝そのものを支えているとも言える。体内で合成できない必須アミノ酸があり、そこは食事から摂るしかない。成長と修復の材料として知られ、筋肉を増やしたい人が食事のたんぱく質を多めに取るのはこのためだと動画は説明する(タンパク質の必要量)。
脂質は避けるものではなく、種類で見る: 脂肪は中性脂肪(トリグリセリド)のことで、グリセロールというアルコールと脂肪酸の鎖が結びついたエステルである。広い意味では脂質という大きな括りに入り、厳密には常温で固体のものが脂肪、液体のものが油と区別される。悪者にされがちだが、構造の面でも代謝の面でも役割があり、食事から摂る必要がある。体内で合成できない必須脂肪酸があること、脂溶性ビタミンのA・D・E・Kは脂質と一緒でなければ消化も吸収も運搬もされないことがその理由で、細胞の正常な働き、臓器を衝撃から守ること、体温の維持、皮膚と髪の健康にも関わる。脂肪酸は鎖の長さで短鎖・中鎖・長鎖・極長鎖に分けられ、食品に含まれる脂肪は植物由来でも動物由来でも中鎖と長鎖が大半を占める。二重結合が無ければ飽和、1つ以上あれば不飽和、複数あれば多価不飽和と呼ぶ。
飽和脂肪酸が体に悪いかは、まだ決着していない: 不飽和脂肪酸にはシス型とトランス型があり、天然にトランス型はごく稀である。心血管の健康については、2015年のフーパーらの報告が、心血管疾患のリスクを抱える人にも低リスクの集団にも、飽和脂肪酸を減らし続け、一部をシス型の不飽和脂肪酸に置き換える助言を続けるべきだとしている。わざわざシス型と断るのは、不飽和の一種であるトランス脂肪酸は心血管疾患のリスクを上げると分かっているためだ。一方で2016年のブリティッシュ・メディカル・ジャーナル誌の記事は、食事の飽和脂肪酸は心臓の健康と関係が無いとし、飽和脂肪酸が配管を詰まらせるというイメージは端的に誤りだと述べた。根拠として引かれるのは観察研究の系統的レビューとメタ解析で、健康な成人では飽和脂肪酸の摂取と総死亡・冠動脈疾患・冠動脈疾患による死亡・虚血性脳卒中・2型糖尿病のいずれにも関連が見られず、冠動脈疾患の二次予防でも、飽和脂肪酸を含む脂質を減らすことは心筋梗塞や心血管疾患による死亡・総死亡の減少につながらなかったという。動画は科学に矛盾はつきものだと両論を並べ、必要より多くカロリーを摂れば余った分は脂肪細胞(脂肪組織)に蓄えられると締める。