減量(カット)
食事の基本
減量(カット)は、筋肉を守って脂肪を削る期間
役割
消費カロリーを下回る食事を続けて体脂肪を減らしていく期間です。エネルギーが不足した状態で筋トレを3週間以上続けた無作為化試験のメタ分析(Murphy と Koehler、2022年)では、除脂肪量の伸びは不足のない群より小さく、筋力の伸びには有意な差がありませんでした。たんぱく質を多めにとって筋トレを続けることが、筋肉を残す土台になります。
摂り方
ボディビルの大会準備などを扱った Helms らのレビュー(2014・2015年)は、体重の減りを週およそ0.5〜1%に抑え、たんぱく質を除脂肪体重1kgあたり2.3〜3.1g(減らし方が厳しく体が絞れているほど多め)にし、筋トレは各筋群を週2回以上、1RMの70〜80%で6〜12回を中心に行うよう勧めます。有酸素運動も、脂肪が十分に落ちる範囲で回数と時間は最小限に、としています。
注意点
エリート選手24人を2群に分け、筋トレをしながら減量させた試験(Garthe ら、2011年)では、週0.7%の減量を狙った群は除脂肪量が2.1%増え、1.4%を狙った群は変わりませんでした。Murphy らのメタ分析は、筋肉を守るなら1日500kcalを超える不足を避けるよう述べます。見た目を競う競技は摂食障害の危険が高いと Helms らは指摘し、食べることへの不安が強いときは医療者に相談を。
出典
- 論文・英語 Murphy C, Koehler K(2022) Energy deficiency impairs resistance training gains in lean mass but not strength: A meta-analysis and meta-regression
- 論文・英語 Garthe I ほか(2011) Effect of two different weight-loss rates on body composition and strength and power-related performance in elite athletes
- 論文・英語 Helms ER ほか(2014) Evidence-based recommendations for natural bodybuilding contest preparation: nutrition and supplementation
- 論文・英語 Helms ER ほか(2014) A systematic review of dietary protein during caloric restriction in resistance trained lean athletes: a case for higher intakes
- 論文・英語 Helms ER ほか(2015) Recommendations for natural bodybuilding contest preparation: resistance and cardiovascular training
解説動画: 体脂肪を減らしながら筋肉を増やせるのか/ザ・きんにくTV 2nd 【The Muscle TV 2nd】
概要: 結論としては体脂肪を減らしながら筋肉を増やすことは可能だが、簡単ではない。脂肪は全身につくもので部分的に落とすことはできないが、筋肉は部位ごとに大きくできるという違いがある。筋肉はタンパク質と十分なエネルギー、そして強い負荷で増え、脂肪はエネルギーが余ると増えて足りないときに分解されるので、この綱引きのぎりぎりを狙うことになる。1日単位でなく、数日から1週間ほどの目で見て判断するとよい。
同じものを食べて自分のデータを取る: 同じカロリーでも腸内細菌や代謝の違いで体の反応は人それぞれ違い、計算通りには動かない。だからできるだけ毎日同じものを食べて、体の反応を見ることを最初のポイントに挙げる。本人も鶏胸肉、オクラ、ゴーヤ、アスパラ、ブロッコリー、にんじん、トマトと固定して、これを増やしたら筋肉が張った、これを減らしたら体脂肪が落ちたが張りは落ちなかった、という感覚を積み上げている。
初心者ほど両立しやすい: 体脂肪がある程度あって運動歴のない初心者は、比較的簡単に両立できる。これまで刺激の入っていなかった筋肉が驚いて反応し、運動していなかった分だけ消費も増えるため。逆に中級者以上は、十分な負荷をかけきれていないと難しくなる。タンパク質は体重1kgあたり1.5〜2g程度を確保し、自分がどれだけカロリーを減らせば落ちるのかも把握しておく必要がある。落とすのはまず嗜好品からで、しっかりした食事を削るのではない。
減量に入ると調子が上がる理由: 減量を始めたら逆に調子が良くなった、という経験には理由がある。トレーニングはバルクアップ期でも減量期でも基本的に変わらず、違うのは食事の中身だけ。普段なんとなく食べていた人が胸肉やゆでたブロッコリー、オートミールに切り替えると、脂質や余計な糖質が減ってクリーンな食事になり、消化吸収がスムーズになる。その結果今まで届いていなかったタンパク質が筋肉に届き、体脂肪が減っているのに筋肉が張ってくることが起きる。
上級者はGLUT4を使う: 超上級者向けの方法として挙げるのが、糖の取り込み口であるGLUT4(グルコーストランスポーター4)の活用。普段は筋肉の中にあるが、しっかり運動して筋グリコーゲンが枯渇した状態で糖質を入れると、GLUT4が筋線維の表面に出てきて糖を筋肉へ取り込む。インスリンの負担を抑えつつ、入ってきたエネルギーを脂肪ではなく筋肉側へ回せるという理屈になる。トレーニング前に最低限の糖質、トレーニング後に脂肪にならない程度の糖質とタンパク質を補給する形で使い、1日の中に空腹の時間もきちんと作る。
解説動画(海外・英語): How To Get Lean & STAY Lean Forever (Using Science)/Jeff Nippard
ダイエットの大半は「戻る」ことが分かっている: 前提として厳しい数字から入る。2009年の番組『The Biggest Loser』の参加者を6年後に追跡した研究では、14人中、体重を維持できていたのは1人だけ。5人は完全に元へ戻り、2人は番組前より重くなっていた(半数が少なくとも元通り)。2020年のシステマティックレビューでも、8つの減量研究すべてが減量には成功したが、すべてで終了後の平均的なリバウンドが起き、開始時を上回った研究もあった。作者の見立ては、結婚式や撮影のように「一時的に絞る」のと、「絞ってその状態を保つ」のは、目標も戦略も別物なのに混同されているから。
仕組み:赤字と、必ず起きる代謝の適応: 脂肪が減るのは消費より摂取が少ない状態(カロリー赤字)のとき。消費は4つの合計で、安静時のエネルギー消費運動による消費運動以外の日常活動(NEAT。立つ・座る・タイピング・貧乏ゆすりなど)食事誘発性熱産生(消化に使う分)。1日500kcalの赤字を続けると週に約0.45kg(1ポンド)減るのが妥当な目標。ただし多くの人が見落とすのが代謝の適応で、痩せるにつれて消費が減る。体が小さくなるので安静時消費が減り、同じ運動でも効率が上がって消費が減り、体の動きが減ってNEATが減り、食べる量が減るぶん食事誘発性熱産生も減る。始めたときの500kcalの赤字は、数週間〜数か月後には500kcalの赤字ではなくなっている(数日で起きることもある)。だからさらに少し減らすか、減量にかかる期間が延びることを受け入れるか、どちらかを選ぶ。
どんな減量法にも必要な3つ: 何をやるにせよ、①脂肪を減らすための持続的なカロリー赤字②筋量を守るためのウエイトトレーニング③筋量を守るのに足りるタンパク質の3つが要る。タンパク質の目安は体重1kgあたり1.6〜2.2g。食事の回数・タイミング・具体的な食品は、ほぼ本人の好みで決めてよい。逆に極端な低カロリーの短期ダイエットは筋肉の損失が大きく、結局戻る人付き合いを断つやり方は人間関係を損ない、続かなくなる食品群を丸ごと断つやり方は栄養不足と抑えられない渇望を招く。
戦略1:ダイエットしている気がしないくらい、ゆっくり進める: 科学ベースの一般則は週に体重の0.5〜1%を落とす(体重90kgなら週0.45〜0.9kg。20ポンド落とすなら10〜20週)。作者はこれを推奨しつつ、さらに遅くすることの利点を自分の実例で示している。40週(約9か月)で11kg(85kg→74kg)、平均すると週あたり0.25kgほど。そのぶん外食もピザも寿司も普通にできて、ダイエットが「とても楽」だった。途中で体重が跳ねた時期も8月に2〜3ポンド、11月に4ポンドあるが、全体の傾向で見れば些細な揺れにすぎない。ゆっくり進めると、我慢している感覚も「早く終わらせたい」という気持ちも生まれないので、目標体重に到達したあとも保ちやすい。実務としては今の維持カロリーから20%引いた赤字。数える気がなければ体重だけ記録して、常識的に低カロリーな選択をするでもよく、カロリーとタンパク質だけ大まかに数え、炭水化物と脂質は追わないという省力化も紹介している(正確な数値が分からない外食は「500〜600kcalくらい」と見積もって終わり、1日合計5分ほど)。
戦略1の続き:終着点も現実的に決める: どれだけゆっくり進めても、体脂肪率6%を1年中維持することはできない。ある地点から睡眠・性欲・気力・気分がすべて落ち、食べ物のことしか考えられなくなる。多くの男性が維持できるのはおよそ体脂肪10〜20%、女性は18〜28%。出発点によっても変わるので(10年間40%だった人が20%を保つのは、もともと痩せ型の人が8%を保つより難しいこともある)、他人の8%が自分の18%かもしれない、と考えて自分の現実的な着地点を決める。遺伝的な体脂肪の幅より絞った体型を保とうとすると、他を完璧にやっても続かない。
解説動画: 一気に体脂肪を落とす食事に変わりました。/山澤礼明【筋肉チャンネル】
食事プランの変更: 山澤さんは、大会の7週間前に食事プランが変わったと話します。カロリーは2650kcalから2350kcalへ300kcal下がり、たんぱく質と脂質はほぼ変わらず、減るのは炭水化物だけです。PFCバランスは炭水化物185g、脂質67g、たんぱく質259gで、割合はたんぱく質44%、炭水化物31%、脂質25%です。減量のオーソドックスな振り分けは炭水化物とたんぱく質が40%ずつ、脂質20%だとも述べています。
ローデイとハイデイ: 今の食事はカロリーと炭水化物を下げたローデイで、コンディションや体重を見ながらおよそ7〜10日続けると、ハイデイが2〜3日入ります。ハイデイは3500kcalほど食べられるそうです。これはチートデーともカーボサイクルとも少し違うリフィードで、7日間ほど枯渇させたあと一時的にカロリーと炭水化物を上げ、筋肉のグリコーゲンを補充して体に張りとパワーを戻し、代謝を上げてまた7日ほど頑張る流れだと説明しています。
有酸素の時間が増える: 有酸素の時間も増えると話します。コーチから、心拍数130前後で毎日30分歩くよう言われていて、傾斜は5〜10度、時速は5.0です。週2日あるトレーニングオフの日は45分歩きます。ゆったり楽に歩くならまだしも、心拍数130前後の少し苦しい状態が45分続くので、楽ではないと言っています。
炭水化物の減り方: 食事の内容は変わらず、すべての食事で食べられる炭水化物が減ったと言います。朝のオートミールは60gから40gに、おやつのバナナは100gから60gになりました。炭水化物を抜けば一番手っ取り早く体重は落ちるものの、フィジーク競技はある種、体重が一番重い状態で絞れている人が有利なので、ただ削ればいいわけではないと述べ、今回のテーマは絞り込みだと話しています。