水分補給

食事の基本

水分補給は、力の出方も回復も左右する土台

役割

水分補給は、汗で失う水分を補い、体の水分量を保つことです。脱水すると筋力は約2%、パワーは約3%、30秒〜2分の全力運動の持久力は約10%下がる傾向があると、総説(Judelson ら、2007年)はまとめます。同じ著者らの実験(2007年)では、筋トレ経験のある男性7人が体重の約2.4%・約4.8%を失う脱水でバックスクワットを6セット行い、2〜3セット目・2〜5セット目の成績がそれぞれ有意に落ちました。

摂り方

米国スポーツ医学会の指針(2007年)は、汗の量が人ごとに違うため個別の補給計画を勧め、運動前後の体重差から汗の量を見積もれるとしています。運動の数時間以上前から飲み始め、運動中は水分不足で体重が2%を超えて減らないようにし、運動後は失った水分と電解質を補います。栄養科学の博士 Rob Wildman は動画で、大量に汗をかかない人に起床直後と3〜4時間ごとの8〜12オンス(約240〜350ml)の水を勧めています。

注意点

運動に伴う低ナトリウム血症(血清ナトリウムが135mmol/L未満)は、主に水などの低張の飲料を運動中に飲みすぎ、体重が増えることで起こると総説(Seal ら、2022年)は述べます。運動時間が長いことや体格が小さいことも危険因子で、飲んだ量と失った量を追って体重の増加を防ぐことなどが、血清ナトリウムの低下をやわらげる可能性があるとします。心臓や腎臓の病気で水分制限がある方は、主治医の指示に従ってください。

出典

  1. 論文・英語 Judelson DA ほか(2007) Hydration and muscular performance: does fluid balance affect strength, power and high-intensity endurance?
  2. 論文・英語 Judelson DA ほか(2007) Effect of hydration state on strength, power, and resistance exercise performance
  3. 論文・英語 Sawka MN ほか(米国スポーツ医学会)(2007) American College of Sports Medicine position stand. Exercise and fluid replacement
  4. 論文・英語 Seal AD ほか(2022) A review of risk factors and prevention strategies for exercise associated hyponatremia
  5. 動画・英語 Bodybuilding.com Law 9: Hydrate | 10 Laws Of Muscle-Building

解説動画: 1日にどれくらい水分を摂ればいいか/ザ・オフの日TV【なかやまきんに君】

出ていく量と入ってくる量: 普通の生活で体から出ていく水分は、汗で約500ml、呼吸や皮膚からの蒸発で約500ml、尿や便で約1500ml、合わせて1日およそ2.5リットル。一方で入ってくるのは、三食の食事に含まれる水分が約1リットル、体内で作られる水が300〜500mlほど。差し引きすると1リットルほど足りないので、飲み水として1〜1.5リットルを補給する必要がある、という計算になる。

飲めば飲むほどよいは間違い: 二十歳の頃、筋トレの先輩から水は飲めば飲むほどいいと言われ、ペットボトルを持ち歩いて1日3〜4リットルを無理やり飲んでいた時期があったと振り返る。血液で栄養が運ばれるので水分自体は必要だが、摂りすぎは腎臓にとんでもない負担をかける。飲んでも飲んでも喉が渇き、トイレが近くなるばかりだったという実感を語っている。

水中毒に注意: 腎臓の最大の利尿速度は毎分16mlとされ、これを超える速度で水を摂ると希釈性低ナトリウム血症、いわゆる水中毒を起こす。塩分を摂らずに水だけを飲み続けると体内のナトリウム濃度が薄まり、濃度を保とうとしてかえって水が排出されるため、健康や美容のためと思って飲みすぎると、逆に体が乾いて肌や細胞の潤いが失われることにもなる。タンパク質でもビタミンでも同じで、水も摂りすぎはよくないとまとめている。

解説動画(海外・英語): Why Hydration Helps Athletic Performance/Ecsell Sports

体重の1から2パーセントの脱水で動きが落ちる: 学生アスリートとチーム向けに、スポーツ栄養士のニコール・レグラー氏が水分補給を解説する回。体の大半は水でできていて、競技に直結するところでは筋肉の75パーセントが水である。水分が足りない状態の目安は体重の1から2パーセントの減少で、体重70キロなら0.7から1.4キロにあたる。脱水になると、スピードと筋力が落ち、敏捷性と反応の速さが鈍り、集中力が下がり、ケガのリスクが上がって疲れ切るまでの時間も短くなる。さらに、筋けいれん、パフォーマンスの低下、頭痛やふらつき、集中できない、だるさや脱力といった形でも表れると挙げている。

体重と尿とのどの渇きの3つで自分の状態を測る: レグラー氏は脱水の判定に体重・尿・のどの渇きの3つを使うことをすすめる。練習や試合の前後で体重を量り、1パーセントより多く減っていれば脱水と考える。体重を使わないなら尿の色で、濃いほど脱水が進んでいる。色の見本と比べながら、日中と、練習や試合の前後で確かめる。3つ目はのどの渇きで、口が渇く、水分が欲しくてたまらないなら脱水の可能性がある。ただし10代の選手は渇きを感じ取る力が弱く、脱水でものどが渇かないことがあるので、渇きだけに頼らず他の兆候も合わせて見る必要がある。

練習の前と最中にどれだけ飲むか: 練習や試合の前は、2から3時間前に水を12から24オンス(約350から700ミリリットル)飲むのが研究に基づく推奨だという。体格に合わせるなら体重1ポンドあたり3から5ミリリットルで、日本の単位に直すと体重1キロあたりおよそ7から11ミリリットル、70キロなら460から770ミリリットルほどになる。あわせて、プレッツェルのような塩気のある炭水化物のおやつか電解質を摂ると、水分を体に保ちやすい。練習中は15から30分ごとに2から3口、量にして4から8オンス(約120から240ミリリットル)。それより間隔が空くなら一度の量を増やし、水分をとる間隔が30分以上空くようなら電解質も足す。

練習後は減った体重のぶんだけ戻す: 練習や試合のあとは、失った水分とナトリウム(塩分)と炭水化物の3つを戻すことに集中する。体重で管理するなら、前後で量って減った1ポンド(約0.45キロ)につき16から20オンス(約470から590ミリリットル)が推奨で、日本の単位では1キロ減るごとにおよそ1.0から1.3リットルにあたる。体重を使わない場合は、尿の色が2から3時間以内に淡い黄色に戻るかどうかを目安にする。そして最も大事なのは、コートやフィールドに立つ時点ですでに脱水している状態を作らないことで、前日や当日の日中から水分の状態を整えておく。

電解質を足すかどうかは4つのHで決める: 電解質をいつ足すかについて、レグラー氏は英語の頭文字Hをそろえた4つの条件を挙げる。練習や試合が60分より長いとき、暑いとき(住んでいる土地の基準で普段より暑い、屋外の高温での練習)、汗が多い人(チームメイトより明らかに汗をかく、パッドなどの防具を着けると発汗量が増える)、そして高強度の時間が長いとき。どれかに当てはまるなら、練習の前や最中に電解質を足す。汗で失うのは主にナトリウムなので、ナトリウムが多くカリウムは中程度の製品を選ぶのが原則で、動画ではリキッドI.V.、LMNT、ゲータライト、糖質も同時に補える通常濃度のゲータレード、ドリップドロップが挙がる。人気のボディアーマーはカリウムが高くナトリウムが低いため、汗で失った分を戻す用途には向かないという。製品はいずれも米国のもので日本では手に入りにくく、経口補水液やスポーツドリンクで代える必要がある。内容は10代の学生アスリート向けの一般的な目安なので、持病がある場合は医療者に相談してほしい。