カフェイン
増量・パフォーマンス
カフェインは、効きも副作用もはっきりした刺激物
役割
中枢神経に働いて眠気の信号であるアデノシンの受容体をふさぎ、疲労感を感じにくくします。主観的なきつさが下がり、集中も続きやすくなります。21本のメタ分析を総括した2020年のレビューは、持久系・筋力・筋持久力・パワーなど幅広い運動で効果を認め、大きさは無酸素より有酸素の運動で大きい傾向としています。ただし元の研究は若い男性が中心です。
摂り方
体重1kgあたり3〜6mg、70kgなら210〜420mgが国際スポーツ栄養学会の示す有効量で、9mg/kgでは副作用が増えます。運動の60分前が一般的です。Grgic(2022年)が12本の試験をまとめたメタ分析では、0.9〜2mg/kg(コーヒー1〜2杯ほど)でも筋力・筋持久力・速度に効果が見られました。半減期は平均4〜6時間で個人差が大きいので夕方以降は控えめに。
注意点
動悸・手のふるえ・強い不安感・不眠・吐き気が出たら摂りすぎのサインです。農林水産省の資料では成人の目安は1日400mg(FDA・EFSA・カナダ保健省)。エナジードリンクは1本50〜170mg、サプリには1回300mg超もあるのでコーヒーやプレワークアウトと合わせた合計で数えます。妊娠中や不整脈・高血圧・不安障害のある方は医療者に相談してください。
出典
- 論文・英語 Guest NS ほか(2021) International society of sports nutrition position stand: caffeine and exercise performance
- 論文・英語 Grgic J ほか(2020) Wake up and smell the coffee: caffeine supplementation and exercise performance-an umbrella review of 21 published meta-analyses
- 論文・英語 Grgic J(2022) Exploring the minimum ergogenic dose of caffeine on resistance exercise performance: A meta-analytic approach
- 公的機関 農林水産省 カフェインの過剰摂取について
- 動画・英語 Institute of Human Anatomy How Caffeine Affects Exercise & Athletic Performance
解説動画: コーヒーのカフェインは筋トレとダイエットに効くのか/ザ・きんにくTV 2nd 【The Muscle TV 2nd】
概要: コーヒーを、カフェイン・クロロゲン酸・タンニン・リラックス効果の4点に分けて解説する。結論としては健康にもダイエットにも良いが注意点もある、という立場。研究の例として2015年の国立がん研究センターの発表では心臓病・脳卒中・呼吸器系の死亡リスク低下、海外で20年間12万人を追った調査では1日2〜3杯飲む人は心臓病による死亡率が約25%低かったことを挙げつつ、合う人も合わない人もいるので参考程度に、と断っている。
カフェインの働きと1日の上限: カフェインは中枢神経に作用して覚醒・興奮させ、自律神経を刺激して運動能力や心臓の収縮機能を高める。血管拡張の作用もあって血流が良くなり代謝が上がるため、筋トレ前や有酸素運動前に飲む人がいる。上限は成人で1日400mg以下、コーヒーカップ2〜3杯ほど。妊娠中は200mg程度。血中濃度が半分になる半減期は4〜6時間なので、眠れなくなる人は就寝までそれだけ空けるとよい。
エナジードリンクとカフェインサプリには注意: 筋トレ前にエナジードリンクを習慣にしている人には注意を促す。エナジードリンクは砂糖も一緒に入っているため、空腹時に飲むと血糖値が急上昇したあと急降下し、途中で眠くなる。カフェイン単体のサプリも、飲み続けるうちに効きが鈍って量が増え依存につながるので、コーヒーやお茶から他の良い成分ごと摂るほうがよいという考えを示している。
利尿作用と水分の関係: カフェインには利尿作用がある。少量なら問題にならないが、トレーニング前に大量に摂ると水分が抜けてパンプアップしにくくなったり、酸素やエネルギーを運ぶための水分が足りなくなるおそれがある。夏場の水分補給をコーヒーで済ませると、かえって水分が体から出ていくことも考えられるため、補給とカフェインは分けて考える。
デメリットは4つ: 整理されたデメリットは、摂りすぎによる不眠や精神の不安定、タンニンが鉄分と結びついて吸収されにくくするため、貧血気味の人は飲みすぎに注意、歯の着色汚れであるステインや口臭、そして空腹時に胃が荒れることの4つ。4つ目は、クロロゲン酸が胃を刺激して胃酸の分泌を促すために起こるので、胃の弱い人は空腹時のブラックを避け、ミルクの入ったラテにするとよい。
解説動画(海外・英語): How Caffeine Affects Exercise & Athletic Performance/Institute of Human Anatomy
どんな運動に効くのか: 解剖学の専門チャンネルによる解説。結論としてはカフェインは運動・競技のパフォーマンスを高める、そして効く範囲が非常に広いのが特徴。90分を超える長時間の中強度運動(長いランやライド)、20〜60分しか続けられない程度の中〜高強度、1〜5分のHIITのような高強度のいずれでも改善が報告されている。心肺系が主役の運動に広く当てはまるということ。加えてウエイトトレーニングでの挙上速度(重量を速く動かす能力)と反応時間の改善も示されており、投擲やジャンプのような爆発的な動き、素早い反応が要る競技にも意味がある。
仕組み1:眠気の信号(アデノシン)を邪魔する: 神経細胞の軸索の末端にはアデノシン受容体がある。日中を過ごすあいだ、細胞のエネルギー通貨であるATP(アデノシン三リン酸)を神経が使っていくにつれてアデノシンが神経の外側に溜まっていき、受容体に結合する。結合すると神経の活動が抑えられ、発火の頻度も強さも下がる。これが疲れ・集中できない・眠いという感覚の正体。カフェインは血流に乗って脳へ届き、アデノシンとよく似た形をしているので受容体にはまるが、受容体を作動させるところまではいかない。鍵穴に入るが回らない鍵、というたとえで説明している。結果としてアデノシンの働きが遮られ、覚醒度・注意・集中が上がる。さらに同じ強度の運動を「きつくない」と感じるようになり(自覚的努力度の低下)、痛みの感じ方もある程度鈍る。この2つがあるぶん、もう少し粘れる=記録が伸びる、という筋道になっている。
仕組み2:筋肉の中のカルシウムに働く: もう一つの経路は筋肉そのもの。筋繊維の中には収縮の最小単位であるサルコメアが端から端まで積み重なっており、カルシウムが筋収縮の引き金になっている。カフェインが筋肉内のカルシウムの動きに影響することを示す研究があり、これが出力の向上に関わっているのではないかと説明している。中枢神経への作用だけでなく、筋肉側にも作用の余地がある、というのがこの動画の要点。