舌の位置

響きと声色

難しさ: 練習すればできる / 効くところ: 声の安定

舌の位置は、声の通り道をふさぎがちな舌の置き場。

どういう技術?

舌はほとんどが筋肉で、根もとは喉の奥まで続いています。高い音や苦しい音になると舌の根が持ち上がり、声の通り道が細くなります。口を開けて鏡を見たとき、喉の奥が見えないならその状態です。舌先の置き場所が決まるだけで、同じ息でも音が抜けるようになります。上あごに舌がべったり付くくせのある人も少なくありません。

やり方

舌の先を下の前歯の裏に軽く触れさせ、そのまま「アー」を4拍のばします。次に「ラララ」を1秒に2回の速さで10回、舌先だけを動かし、あごが一緒に上下しないことを確かめます。最後にもう一度「アー」。1回目より喉の奥が広く感じられれば、舌が下りています。

練習のしかた

歌う前の3分でできます。「タ・ナ・ラ・ダ」を1音ずつ4拍、低い方から5音のぼって下りるだけです。目安は、のぼり切ったところで舌先が前歯の裏から離れないこと。離れるなら、そこが今日の限界の高さです。曲の中で試すときは、高いフレーズの直前で一度舌先を確かめる癖をつけると、本番でも間に合います。意識しなくても下りたままでいられるのは1〜2か月先で、それまでは毎回確かめる手間が要ります。

やりがちなミス

舌を下げようとして、根もとから押しつぶすと、かえって喉が固まります。力を入れて平らにするのではなく、あくびの入り口の脱力に近い形です。舌先を意識しすぎると子音が鈍ります。言葉が不明瞭になったらいったん戻してください。喉を開くと合わせて考えると分かりやすく、どちらか一方だけを直しても効果は出にくいところです。

解説動画: 舌の余分な力を抜く方法!日本人歌手にとって一生の課題!舌の癖を克服するには?/車田和寿-歌の翼に

舌の力みは肩こりと同じ: 日本語を話しているだけでも舌には力が入り、本人が気づかないまま癖が強くなる——講師は声楽を学ぶ日本人のほぼ全員がこの状態だと言います。舌の奥が固まったのは重い肩こりと同じで、自力では抜けません。まず凝りをほぐすところから始めます。

あごの下を揉みほぐす: 舌の奥に力が入っている人は、あごの下が奥へへこんだ形をしていて、声を聞かなくても見れば分かるそうです。親指で舌の根もとを前へ突き上げるように押してマッサージします。講師自身も長く日本語を話した後はここをほぐすようにしていて、それだけで声が柔らかくなると言います。

舌を前に出したまま歌う: 母音だけの練習で、舌を前へ出しながら歌います。このとき舌を平らに保ち、下唇にリラックスして乗せておくのが条件です。前へ出しているのに真ん中へ集まってくるなら、向きが変わっただけで力は入ったまま。つった足を逆方向へ伸ばすのと同じ原理だそうです。

ハンカチで引っ張る: 講師が毎日やっているのは、ハンカチで舌をつまみ引っ張ったまま歌う方法です。鏡で見ると、音が高くなるほど舌が奥へ戻るのが分かります。引っ張ると舌の後ろにスペースができ、自分にはまったく違う声に聞こえますが、そこが本来使うべきスペースだといいます。

喉頭とは切り離す: 舌と喉頭はつながっているので、舌を思い切り出すと喉頭も一緒に上がってきます。狙いは舌は前へ、喉頭は下へと別々に伸ばしてスペースを作ること。合っているかは自分では判断できないので人に聞いてもらう必要があり、間違った練習はやるほど癖がつくとも念を押しています。

解説動画: 舌を柔らかくする練習!正しい舌の位置を意識して一緒に練習しましょう!Deine Tante!/車田和寿-歌の翼に

二種類の舌の練習: 舌を柔らかくする練習には、ふだんから入っている力を抜く練習と、舌を素早く動かす練習の2種類があると動画は説明します。力を抜くだけでは歌えないとし、歌う言葉の中で舌が忙しく動く間も余分な力が入らないようにする練習も大事だとしています。日本人はふだん舌をあまり動かさずに話すため、歌うときは動かし方が分からずぎこちなくなり、発音の悪さや不明瞭な母音につながると述べています。

ダイネタンテの由来: この練習は「ダイネタンテ」というドイツ語(あなたのおばさんの意味)を発音し、DとTの舌の位置を区別する練習だと動画は説明します。話者はドイツの劇場で歌い始めた頃にこの基礎練習を習ったと話しています。Dは前歯4本分、Tは前歯2本分に舌が当たるとし、一般には声を鳴らすかどうかの違いだけだと言われがちだが、舞台で綺麗に発音するにはそれだけでは足りないと述べています。

子音を短く保つ: Tの発音をするとき、必要以上に破裂させないことが大事だと動画は述べています。アメリカ英語ではtime(タイム)のようにTを強く破裂させることがあるが、それ以外では多くなく、破裂させるとレガートがすぐに分断されてしまうためだと説明します。ドイツ語でも英語でもイタリア語でも、歌うときは子音を短く綺麗に発音することが重要だとしています。

Nの発音の注意: 「ダイネタンテ」にはNも重要な音として登場し、日本人はNの発音を苦手とする人が多いと動画は指摘します。母音の後にNが来る場合、正しいNではなく鼻にかかった「ング」のような発音になりがちで、この違いを意識して発音していない人も多いとしています。Nを発音するときは舌が上の歯全部に触れるのに対し、「ング」の音では舌はどこにも触れず、舌の奥が軟口蓋に触れることで生じるという違いがあると説明します。

練習で力が抜ける: ゆっくり「ダイネタンテ」と言い、慣れたら少しずつ速くしていく練習方法だと動画は説明します。こうして練習を重ねると、だんだん余分な力が抜けてくるとし、逆に余分な力が入っていると舌を素早く動かすことはできないと述べています。舌がどこに当たっているかを正確に把握したうえで練習することで、必要のない力がだんだん抜けるようになるとしています。