口の開き方
響きと声色
声の通り方を変える口の開き具合と形
どういう技術?
口はからだの共鳴の出口です。あごを下げて縦に長く開くと音は奥で丸くなり、横に引けば平たく明るい音色に寄ります。開きが足りないと、息は出ているのに声だけが小さく聞こえます。日本語は口先だけでも話せてしまうため、話すときの開きのまま歌うと、サビで音量が伸びません。
やり方
まず縦に人差し指と中指を重ね、指2本分があごと歯の間に入るところまで口を開けます。その形のまま「アー」を4拍。次に「イ」「エ」でもあごは下げたまま、唇だけを横に動かします。部屋のモニター画面は暗い場面で鏡になるので、映る自分の口を見て、上下ではなく横だけが広がっていないか確かめます。
練習のしかた
1曲まるごと直そうとせず、サビの1行だけをくり返します。同じ行を3回歌い、1回目は普段どおり、2回目は指2本分の開き、3回目はその開きのまま言葉を置くようにします。5分で違いは分かりますが、あごの筋肉が慣れるまでは2〜3日かかり、大きく開けることが変な顔に感じなくなってからが本番です。
やりがちなミス
開ければ開けるほど良い、ではありません。あごを限界まで下ろすと舌の根まで固まって、滑舌が崩れます。口の端が突っ張る、あごの付け根が痛むといった感覚が出たら開けすぎです。速い曲では開き幅よりも元へ戻すはやさが効き、大きく開けたまま次の言葉に入ると、全部つながって聞こえます。
解説動画: 民謡歌手が教える 発声基礎 口と喉の開け方/おもだか秋子
ジャンルで開け方が違う: 裏声の音域で歌うコーラスやソプラノは口を縦に細長く開ける。いっぽう地声で歌う民謡や歌謡曲は笑うように横へ開き、口の入り口はあまり開けない。その代わり奥はしっかり開ける——同じ歌でも狙う響きが違えば開け方が正反対になる、という対比から話が始まる。
歯と歯の間を浮かせる: 民謡の歌い手がよく言うのが、上下の歯と歯の間を浮かせること。目安は人差し指が入るくらい、口の中に卵が一つポカンと入るくらいの空間を常に残しておく。唇を大きく開くのとは別の話で、開けるのはあくまで口の中の空間のほう。いつも歌っている歌にこの動作を一つ入れるだけで、声の出方が変わるのが分かるという。
浮かせると姿勢が変わる: ただ口を開けたときと、歯の間を浮かせたときとでは体の状態が違う。浮かせると胸が開き、肩からストンと力が落ちるのが分かり、ここまで来ないと喉を開くのが100%にはならないという。逆に猫背や巻き肩、首が前へ出た姿勢だと空気の伝わり方がまるで変わる。
とがらせるとこもる: 歌っているとつい口をとがらせたくなるが、とがらせると喉が閉まって響きがこもる。この歌い手自身はほとんど口を動かさずに歌っていて、口先を動かす代わりに中の空間で母音を作りにいく。なお1曲を通して歌えば、高いところや言葉の並びによって喉が閉まりやすくなる箇所も出てくる、とも言い添えている。
母音は奥の空間で作る: 上顎と下顎の間が同じままだと、音がはっきりしない。奥のほうを上へグッと広げて空間を作ってやると声が抜けやすくなる。日本語で出しづらい「む」のような音も、母音は「う」だと意識し、口の形を保ったまま奥の高い位置に空間を作る。どんな言葉でも最後は母音が全部の基本になる、という締めくくり。