2022年 インフレと金利上昇
世界の暴落
年: 2022年 / 最大下落: 株約25%・債券も二桁 / 回復まで: 約2年
2022年インフレと金利上昇は、米国の消費者物価が9.1%まで上がって政策金利が急速に引き上げられ、S&P500が約25%、米国総合債券インデックスも二桁の下落を同時に記録した出来事です。株が下がれば債券が上がるという関係は常に成り立つわけではないことを示し、株価の回復には約2年かかりました。
何が起きたか
米国の消費者物価は2022年6月までの12か月で9.1%上昇し、1981年11月までの12か月以来の大きさでした(米国労働統計局)。連邦準備制度は3月に政策金利を0.25〜0.5%へ上げ、12月には4.25〜4.5%まで引き上げました。金利が上がると債券は値下がりします。株式も同時に下がり、第一生命経済研究所のエコノミストは動画で、成長への期待が高かったテック企業の株が金利上昇で魅力を下げたと説明します。
どれくらい下がったか
S&P500は2022年1月3日の終値4,796.56から10月12日の3,577.03まで約25%下がりました(FRED)。投資コンサルタントの Callan によると、4月までの年初来で、S&P500は12.9%、米国総合債券インデックスは9.5%の下落です。円ドルは115.27円から146.87円へ動いたため、同じ2日の円換算では約5%の下げでした(単純計算)。
戻るまでにかかった時間
S&P500の終値が2022年1月3日の終値を上回ったのは2024年1月19日(4,839.81)で、約2年かかりました。この日の終値は、2022年10月12日の安値から約35%上がった水準でした。この間、連邦準備制度は2023年7月まで利上げを続け、政策金利を5.25〜5.5%へ上げました。株価が戻ったのは、その約半年後です。
ここから学べること
「株が下がれば債券が上がる」は、常に成り立つ関係ではありません。Campbell らの論文は、1953〜2014年の米国債と株の連動が、平均ではわずかなプラス、1980年代前半は異例に高く、2000年代はマイナスだったと報告しています。BIS の分析では、米国の株と国債の相関は2021年半ばにプラスへ変わり、物価が高い局面では同じ向きに動きやすいと説明します。分散は保険ではなく、平時の揺れをならす道具です。
出典
- 公的機関・英語 U.S. Bureau of Labor Statistics(米国労働統計局)(2022) Consumer Price Index – June 2022
- 公的機関・英語 Federal Reserve Board(2022) FOMC statement, March 16, 2022
- 公的機関・英語 Federal Reserve Board(2022) FOMC statement, December 14, 2022
- 公的機関・英語 Federal Reserve Board(2023) FOMC statement, July 26, 2023
- 公的機関・英語 Federal Reserve Bank of St. Louis(FRED。元のデータは S&P Dow Jones Indices) S&P 500 (SP500)
- 公的機関・英語 Federal Reserve Bank of St. Louis(FRED) Japanese Yen to U.S. Dollar Spot Exchange Rate (DEXJPUS)
- 資料・英語 Jay Kloepfer(投資コンサルティング会社 Callan)(2022) Unprecedented Territory—and the Inherent Limits of Diversification
- 公的機関・英語 Marco Lombardi, Vladyslav Sushko(BIS Quarterly Review)(2023) The correlation of equity and bond returns
- 論文・英語 John Y. Campbell, Adi Sunderam, Luis M. Viceira(Critical Finance Review)(2017) Inflation Bets or Deflation Hedges? The Changing Risks of Nominal Bonds
- 動画 PIVOT 公式チャンネル 【金利と株価のいびつな関係】EXIT・りんたろー。がゼロ知識で学ぶ金利の仕組み/日銀がマイナス金利解除に踏み切った背景/国山ハセンも誤解?金利上昇=株価下落は間違いだ【MONEY SKILL SET】
解説動画: 【資産運用】資産運用って、インフレ対策になるの?│投資Q&A/金融経済教育推進機構 (J-FLEC) チャンネル
インフレとは何が起きている状態か: 物やサービスの価格が上がり、お金の価値が相対的に下がる状態。100円で買えていたチョコレートが200円になれば、同じ金額で買える量が減る=お金の価値が下がったことになる、という説明から入る。
預金がどうなるか: 100万円を年0.002%の金利で20年預けても増えるのはおよそ400円。一方、いま100万円の自動車は物価が毎年1%ずつ上がれば20年後に120万円になる。つまり預けていた100万円では買えなくなる。数字で並べると、金利と物価の差がそのまま購買力の目減りだと分かる。
「預金は安全」の意味: 預貯金しか持っていないと、資産の価値が減ってしまう可能性があると明言している。値動きが無いことと、価値が保たれることは別だという論点が、公的な立場から示されている数少ない動画。
解説動画: 第15回 株価を動かす力②~インフレーション・デフレーションと景気~/金融経済教育推進機構 (J-FLEC) チャンネル
インフレは2種類ある: 需要が供給を上回って物価が上がる場合と、需要が増えていなくても原材料などの値段が上がってインフレになる場合がある。後者は必ずしも景気が良くなるわけではないと明言されており、2022年に起きたことの理解に直結する。
景気と株価のつながり: 需要が増えるタイプのインフレは好景気の局面で起こりやすく、会社の業績が上向くので株価も上がる。逆にデフレは不景気の局面で起きやすく、株価も下がる。同じ「物価が上がる」でも、原因が違えば株価への効き方が違う。
景気は循環する: 不景気がずっと続くわけではなく、物の値段が下がれば買える人が増え、また値段が上がって景気が良くなる。良くなったり悪くなったりを繰り返すのが景気だ、という整理で締めている。