擒賊擒王
主力を砕き頭を捕らえて、全体を崩す計。


絵: オトモシリーズ(画像生成で描いた絵)
計の順
第十八計
読み
きんぞくきんおう
意味
敵の堅い所を砕き、頭を奪えば、全体はばらばらになる、という計。計に付いた解説は、小さな得を取って大きな的を残すことを戒める。勝ちかけて主力と頭を逃がすのは、虎を山へ帰すのと同じだと言う。結びは易の坤卦の句で、野で戦う竜は道が窮まっている、という意味である。
名前のもとになった故事
計名は「賊を擒うるには王を擒う」と読む。もとは唐の杜甫の詩「前出塞」の句である。計に付いた解説は、唐の張巡の話を引く。張巡は敵将の尹子奇を射たいが顔を知らず、よもぎの茎を削った矢を射させた。矢が尽きたと喜んだ敵兵が報告に走り、尹子奇の姿が知れた。部下が左目を射当て、尹子奇は軍を退いた。
見分け方
将棋やチェスで、相手が取れる駒を取らずに王の周りへ手を進めるときは、この形である。小さな得を捨てて、決着を取りに来ている。自分も駒の損得より先に、王の周りの守りを数える。
よくある誤解
ことわざとしては、物事は要を押さえよ、という意味で使われる。解語は、頭を奪う前に堅い所を砕くと書く。頭だけを狙えば済むという近道の話ではない。もとの杜甫の詩は、侵略を止められれば多く殺すことはない、と続く。
計名と解語(原文と書き下し)
擒賊擒王。「摧其堅、奪其魁、以解其體。龍戰於野、其道窮也」(其の堅きを摧き、其の魁を奪い、以て其の体を解く。竜、野に戦うは、其の道窮まるなり)。
故事と成立の確かさ
張巡の話は『資治通鑑』巻二百十九の至徳二年の条にあり、按語の文とほぼ重なる(通鑑は「喪其左目」、按語は「中其左目」)。『新唐書』張巡伝は敵将を「尹子琦」と書く。どちらの巻にも「擒賊擒王」の四字は出ない。杜甫の詩の句は「擒賊先擒王」の五字である。解語の「龍戰於野、其道窮也」は、易の坤卦の象伝に「龍戰于野」の形で見える。
出典
- 資料・中国語 維基文庫 三十六計 攻戰計
- 資料・中国語 維基文庫(杜甫) 前出塞(杜甫)其六
- 資料・中国語 維基文庫(司馬光) 資治通鑑 卷二百十九 唐紀三十五
- 資料・中国語 維基文庫 新唐書 卷一九二 張巡傳
- 資料・中国語 維基文庫 周易 坤
- 公的機関・中国語 中華民國教育部(2020) 成語典 擒賊擒王(修訂本參考資料)
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