美人計
強い軍は、率いる者の心から崩す計。


絵: オトモシリーズ(画像生成で描いた絵)
計の順
第三十一計
読み
びじんけい
意味
強い軍は、率いる者の心から崩せ、という計。解語はこう言う。兵が強ければ将を攻め、知恵のある相手なら情を攻める。将が弱り兵が緩めば、勢いはひとりでにしぼむ。二句目の「兵智者」は、読みに幅がある。計に付いた解説は、土地や財貨を差し出しても相手を強くするだけだと言う。
名前のもとになった故事
計名は「美人の計」と読む。計に付いた解説は、越王の勾践が西施を呉へ送り、呉王の夫差を喜ばせた話を引く。西施の名は『呉越春秋』に見える。越の大夫の種が九つの策を挙げ、四番目が呉王の心を惑わす策だった。越は西施と鄭旦に三年学ばせて呉へ送る。伍子胥は受けるなと諫めたが、呉王は受けた。
見分け方
多人数のボードゲームで、優勢な自分に気前のよい申し出が続くときに思い出す。確かめるのは、受け取った物ではない。受け取ったあとで、自分が怠り始めた備えである。申し出の前と後で、自分の手番の使い方を見比べる。
よくある誤解
人を餌にして罠へ誘う計略の意味で使われる(教育部『重編国語辞典修訂本』)。解語に「美人」の字は無い。言っているのは、強い軍は将の心から崩れる、ということである。計に付いた解説の例も、罠へ誘う話ではない。
計名と解語(原文と書き下し)
美人計。「兵強者、攻其將;兵智者、伐其情。將弱兵頹、其勢自萎。利用御寇、順相保也」(兵強き者は其の将を攻め、兵智なる者は其の情を伐つ。将弱く兵頹るれば、其の勢い自ずから萎ゆ。用て寇を御ぐに利あり、順にして相保つなり)。結びの二句は『周易』漸の卦の象伝に同じ句がある(頁の字は「禦寇」)。按語は「兵強將智」と受けており、解語の「兵智者」とは字が合わない。
故事と成立の確かさ
按語の西施の例に、維基文庫の頁は『左伝』哀公十一年の注記を付ける。開いた哀公の巻に西施の名は無く、越が呉の王と臣に贈り物をし、伍子胥が恐れた話がある。『史記』は美女と宝器を太宰嚭に贈ったと書き、『国語』は美女八人とするが、西施の名は出ない。『三国演義』第五十四回は、劉備と孫権の妹の縁組を周瑜の策とし、「美人計」と呼ぶ。正史の周瑜伝では、周瑜が劉備を呉に留めよと進言し、孫権は容れていない。先主伝は、孫権が妹を嫁がせて好を固めたと書く。
出典
- 資料・中国語 維基文庫 三十六計 敗戰計
- 資料・中国語 維基文庫(趙曄) 吳越春秋 勾踐陰謀外傳第九
- 資料・中国語 維基文庫 春秋左氏傳 哀公(哀公十一年)
- 資料・中国語 維基文庫(司馬遷) 史記 卷四十一 越王句踐世家
- 資料・中国語 維基文庫 國語 卷二十 越語上
- 資料・中国語 維基文庫 三國演義 第五十四回 吳國太佛寺看新郎 劉皇叔洞房續佳偶
- 資料・中国語 維基文庫(陳壽) 三國志 卷五十四 吳書 周瑜傳
- 資料・中国語 維基文庫(陳壽) 三國志 卷三十二 蜀書 先主傳
- 資料・中国語 維基文庫 周易 漸
- 公的機関・中国語 中華民國教育部 重編國語辭典修訂本 美人計
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