苦肉計
自分を傷つける者はいない、という思い込みを突く計。


絵: オトモシリーズ(画像生成で描いた絵)
計の順
第三十四計
読み
くにくけい
意味
人は自分で自分を傷つけない、という思い込みを突く計。解語はこう言う。害を受けた者は、本当に害されたのだと信じられる。偽りが真に、真が偽りに見えれば、敵を裂く策が通る。計に付いた解説は、味方どうしの仲違いを装って敵に近づく策だと説く。三句目の「仮真真仮」は、読みに幅がある。
名前のもとになった故事
計名は「苦肉の計」と読む。知られているのは『三国演義』第四十六回である。周瑜は皆の前で黄蓋を打たせ、黄蓋は曹操に偽りの降伏を申し出る。計に付いた解説は別の例を引く。鄭の武公は胡を攻める前に、娘を胡の君に嫁がせた。胡を討てと答えた大夫の関其思を殺すと、胡は備えを解き、鄭に取られた。
見分け方
将棋で、相手が大駒をただで捨ててきたときに思い出す。損をした側に狙いは無い、と考えやすい。確かめるのは、捨てられた駒ではない。駒を取ったあと、自分の駒が動かされる先である。
よくある誤解
日本語の「苦肉の策」は、苦しまぎれに考えた手立ての意味で広く使われる。もとの意味は、敵を欺くために自分の身を苦しめる計略である(辞書編集者の神永曉の連載)。解語も、傷を受けた者は信じられる、という点を言う。
計名と解語(原文と書き下し)
苦肉計。「人不自害、受害必真;假真真假、間以得行。童蒙之吉、順以巽也」(人は自ら害せず、害を受くれば必ず真なり。仮を真とし真を仮とすれば、間以て行わるるを得。童蒙の吉なるは、順にして以て巽なればなり)。結びの二句は『周易』蒙の卦の象伝に同じ句がある。
故事と成立の確かさ
『三国志』周瑜伝では、黄蓋が火攻めを進言し、降ると偽る書を先に曹操へ送る。注の『江表伝』は書の文面を載せる。黄蓋が打たれる話は、周瑜伝にも黄蓋伝にも無い。「苦肉計」の語は『演義』第四十六回に出る。鄭の武公の話は『韓非子』説難にある。按語のもう一例の酈食其は、『史記』では斉を説き伏せたあとに韓信が斉を襲い、斉王に煮殺される。韓信は蒯通の勧めで動いており、謀って犠牲にしたとは書かれていない。
出典
- 資料・中国語 維基文庫 三十六計 敗戰計
- 資料・中国語 維基文庫 三國演義 第四十六回 用奇謀孔明借箭 獻密計黃蓋受刑
- 資料・中国語 維基文庫(陳壽) 三國志 卷五十四 吳書 周瑜傳(裴松之注引『江表傳』)
- 資料・中国語 維基文庫(陳壽) 三國志 卷五十五 吳書 黃蓋傳
- 資料・中国語 維基文庫 韓非子 說難
- 資料・中国語 維基文庫(司馬遷) 史記 卷九十七 酈生陸賈列傳
- 資料・中国語 維基文庫(司馬遷) 史記 卷九十二 淮陰侯列傳
- 資料・中国語 維基文庫 周易 蒙
- 公的機関・中国語 中華民國教育部 成語典 苦肉計(修訂本參考資料)
- 資料 神永曉(ジャパンナレッジ)(2016) 第302回 「苦肉(くにく)」はどこの肉が苦しいのか?(日本語、どうでしょう?)
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