鹿狩りゲーム

ゲームの型

鹿狩りゲームは、協力すれば大きな獲物が取れるが確実に取れる小さな獲物もあるという、協力するには相手を当てにする賭けが要る型。

何を表す考え方か

全員が協力すれば大きな成果があるが、一人で確実に手に入る小さな成果もあり、協力するかどうかは相手が協力してくれる見込みに左右される、という型。

どういう設定で考えるか

ルソーは『人間不平等起源論』(1755年)の第2部で、鹿を捕らえるには各自が持ち場を守らねばならないが、野兎が手の届くところを通れば、ためらわずそれを追うだろう、と書いている。スキームズは、野兎狩りは協力の危険が小さいが報酬も小さく、鹿狩りは全員の協力が要るが報酬が大きい、という対比でこの物語を整理している。この項目のための仮の数値として、二人とも鹿を狙えば各 4、二人とも野兎なら各 3、鹿を狙って相手が野兎なら 0(野兎の側は 3)と置くと、「二人とも鹿」と「二人とも野兎」のどちらも、単独で選択を変えても得をしない状態になる。

誰がいつ示したか

物語の出どころはルソーの1755年の著作である。これをゲームの型として整理し、協力と集団行動の中心に置いたのが、スキームズの著書『The Stag Hunt and the Evolution of Social Structure』である。この本の書評(ファン・ロイ、2007年)は、ゲーム理論で慣習や社会契約を説明する試みを1969年のルイスに遡れるとする。ゲームとしての名前や利得表を最初に示した人は、開いた資料では確かめていない。

当てはまらない条件

野兎の取り分が相手の行動に左右されず、鹿は協力して初めて取れる、という前提で成り立つ。鹿の報酬が野兎より小さければ鹿を狙う理由がなくなり、別のゲームになる。

よくある使われ方とのずれ

囚人のジレンマと並べて語られるが、構造は違う。囚人のジレンマでは、相手が何を選んでも裏切りが有利になる。上の仮の数値の鹿狩りでは、相手が鹿を狙うなら自分も鹿(4 > 3)、相手が野兎なら自分も野兎(3 > 0)で、有利な選択は相手の選択しだいで変わる。問題は損得の順番ではなく、相手が鹿を狙ってくれるかどうかの見込みにあり、二つの状態のどちらになるかはこの設定だけでは決まらない。