驚くべき三位一体

戦争とは何か

篇: 第一篇

驚くべき三位一体は、戦争を、根源的な暴力性・偶然と確率の働き・政治の道具としての従属性という三つの傾向が絡み合ったものとして捉える、原典でも屈指の難解な一節。

『戦争論』のどこにあるか(篇と章)

第一篇第一章「戦争とは何か」の末尾近く、第28節。

原語と原文

「eine wunderliche Dreifaltigkeit, zusammengesetzt aus der ursprünglichen Gewaltsamkeit seines Elementes, dem Haß und der Feindschaft...」(一つの驚くべき三位一体であり、その要素にもとから備わる暴力性、憎しみと敵意……から組み立てられている)。

クラウゼヴィッツの言っていること

原文は、戦争がその都度姿を変える「カメレオン」のようなものだとしたうえで、全体としては三つの傾向——もとから備わる暴力性や憎しみ・敵意、偶然と確率の働き、そして理性の働きに任される政治の道具としての従属性——が組み合わさったものだと述べる。そのうえで、理論はこの三つのどれか一つに偏らず、三者のあいだで釣り合いを保つ必要があると説く。

研究者の間で読みが割れるところ

この三位一体を「民衆・軍・政府」という三つの主体にそのまま一対一で対応させてよいかどうかは、研究者の間でも見方が大きく分かれる。原文が挙げているのはあくまで暴力性・偶然性・政治的従属性という三つの働きであって特定の制度や集団を名指ししているわけではないと注意する読み方がある一方、実務上は三つの主体に置き換えて説明されることも多く、どちらが原文に忠実かは確かめきれない。

よくある引用とのずれ

「民衆・軍隊・政府」という三つの制度の均衡を説いた図式として広く紹介されることがあるが、原文がここで並べているのは、暴力性・偶然と確率・政治への従属という三つの性質や働きであり、三つの組織や主体を直接に指す言葉としては書かれていない。