拡大された決闘

戦争とは何か

篇: 第一篇

拡大された決闘は、戦争とは何かを一対一の決闘を大きくしたものとして捉え、そこから力の応酬という発想へ進む書き出しの一節。

『戦争論』のどこにあるか(篇と章)

第一篇「戦争の本質について」第一章「戦争とは何か」の第2節。クラウゼヴィッツ自身が遺稿の中で唯一「完成した」と書き遺した章(書の成り立ちと読まれ方の項を参照)の冒頭に近い部分に当たる。

原語と原文

「Der Krieg ist nichts als ein erweiterter Zweikampf.」(戦争とは、拡大された一対一の決闘に過ぎない)。

クラウゼヴィッツの言っていること

原文は、戦争という複雑な現象を考え始めるにあたり、まず二人の人間が力ずくで相手を組み伏せようとする決闘という単純な型に置き換える。決闘する者どうしが互いに力を尽くして相手を屈服させようとするように、戦争もまた、無数の決闘が積み重なったものとして捉えられると述べ、続く節で、これを敵の意志を強制するための暴力行為という定義へつなげていく。

研究者の間で読みが割れるところ

「決闘」という比喩をどこまで文字どおりに受け取るべきかは、研究者の間でも見方が分かれる。個々の兵士どうしの格闘という具体的なイメージとして読む立場もあれば、単に「二つの意志のぶつかり合い」という抽象的な構造を示すための出発点に過ぎないとする立場もあり、この一文だけから結論づけることは確かめられない。

よくある引用とのずれ

この一句だけを取り出して「戦争とは単なる殴り合いだ」という趣旨で引かれることがあるが、原文はこのあとすぐに、決闘する双方が相手をさらに上回ろうとして際限なく力を強め合う、という力の応酬の話へ進んでおり、単純な力比べの比喩にとどまらない。